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2006年8月18日 (金)

いつも心に少女マンガ

王妃だもの。

 「なぜ…神は…わたしという平凡な女にふさわしい平凡な運命を与えてくださらなかったのだろう…」

 これは悲劇の王妃、マリー・アントワネットの「ベルサイユのばら」での独白です。
 マリー・アントワネットといえば、フランスの王妃として栄華を極めた人生の前半と、革命によりすべてを剥ぎ取られ断頭台の露と消える人生後半とのあまりの落差ゆえに、そのドラマチックな生涯に興味をもたずにいられない人物です。

 「ベルばら」読者だった少女時代の私は、小学校中学年くらいまではただただ、ドレスや絵柄の華麗さにうっとりして読んでいたように思います。しかし、自分の成長とともに、徐々にアントワネットに批判的になっていったのでした。
 アントワネットの母にしてオーストリアの偉大な女帝、マリア・テレジアいわく「あまったれですなおで考えることのきらいな平凡な娘」であるマリーは、フランスの民衆が貧しさにあえいでいる世情にはまったく無頓着に、ベルサイユ宮殿で己の楽しみにすさまじいお金を浪費します。そんなマリーは、少女時代(おそらく、小学校高学年から中~高校生くらい)の私には、あまりにも自分の置かれた立場の「責任」に無自覚で、目先の快楽に目を奪われた女性に見えたのでした。

 しかし、昔「ベルばら」を読んだときにはあまり気にしなかったのですが、実はアントワネットが祖国・オーストリアから政略結婚でフランスに嫁いだのは、わずか14歳のとき。大人になって読むと、その「早い結婚」に改めて驚愕しました。

 もちろん、当時の世相としては当たり前で、今とは感覚が違うのでしょう。しかし、それをふまえた上でも、自分が14歳だった頃を遠く離れて思うのは、「14歳の自分は、子どもだった」なぁ、ということです。まだまだ周囲に守られたなかで自分を作っていく、人格の固まっていない時期。友達とアホな話をしてギャハハと大騒ぎしつつ、一方ではけっこう真剣なことも考えていたり、と、不安定な時期でもあります。
 そんな年ごろに、アントワネットは、文字通り祖国・オーストリアのものは下着一枚まで脱ぐことを強いられ、フランスという国へ単身、嫁いでいったのです。

 質実な母の懐で守られた生活から、いきなり華美なベルサイユに投げ込まれ、周囲からは未来の最高権力者としてちやほやされれば、「う~ん、そりゃあ自制心がぶっとぶのも無理はないかもなあ」と思ってしまいました。

 そして、そんな生活は、目もくらむほどの快楽であったと同時に、どこかに寂しさのあるものだったのかも、と今「ベルばら」を読むと思います。
 なぜなら、無駄遣いに暴走するマリーを本当に心配して、対等もしくは上から「優しく、しかし厳しく、マリーの心に響く形で彼女を諫める」人が、マリーの側にいなかったことが伺えるからです。外国から嫁いできた幼いマリーの味方になってくれるはずの夫・ルイ16世は、内気で自分の趣味ばかりに没頭し、悪い人ではないけれど、なんとも頼りになりません。

 そんななか、マリーがスウェーデンからやってきた颯爽としたフェルゼンと出会い、恋に落ちたのも、フランスではお互い「異邦人」であるところに、無意識の共感があったのかもしれません。

 やがてルイ16世とのあいだに子どもが生まれると、マリーは優しい母へと変わっていきます。賭博や仮面舞踏会より、子どもたちといるほうがずっと楽しい、と微笑みながら話すマリー・アントワネットという女性は、まさに、非凡な美しさと平凡な内面をもつ、「特別な立場におかれた、ふつうの女の人」だったのかもしれません。
そんな彼女が首飾り事件を経て、ついに真のフランス王妃としての自覚に目覚めたときにはとき既に遅く、革命の歯車は、もう止められないものとなっていたのです。

 それにしても、かわいらしくて美しく愛らしく、陽気で人がよくて、しかし「ふかく考えることが大きらいだし だいいちまだ若すぎて とてもじぶんでじぶんをおさえてなどいけ」ない、と母・マリア・テレジアに心配されていたアントワネット。現代の日本に生まれていたら、ギャルとして若い頃は遊びまくり、子どもが生まれたら優しい母となって幸せな人生を送っていたのかも、と思えます。(川原和子)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/08/18 10:30:00 いつも心に少女マンガ | | トラックバック (1)

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