いつも心に少女マンガ
「リングにかけろ」の少女マンガ成分
私がマンガを読み始めた70年代後半。それは、まだかなり明確に「男子向け」「女子向け」のマンガが分かれていた時代でした。
いまでこそ少年マンガを女子が読むことはまったく珍しくなく、絵柄も内容も男女ともに楽しめるようになってきています。
でも当時の少年マンガは、線が太くあらあらしい描線のマンガが主流で(と記憶しています)、小学生女子だった私にはなんとなく近づきがたく、かわいいラブストーリーが多かった2大少女誌「りぼん」「なかよし」の発売日を毎月楽しみにしている、スタンダードな少女マンガ好きだったのでした。
そんな私がある日(おそらく小学校高学年?)、自転車で30分くらいのところにある古本屋さんで、一冊の少年マンガ単行本を見かけました。
「あっ、これ、たしか弟が好きとか言ってたなぁ。買っていってあげよう」
と何気なく購入したのですが、持ち帰って読んでみたら、……お、お、面白ぇ…!!(←口調まで、少年マンガ調に)
結局、このマンガは弟ではなく私の本棚におさめられ、続きは新刊の本屋さんで買いそろえられることになりました。
そのマンガこそ、当時、少年ジャンプで連載されていた人気ボクシングマンガ、「リングにかけろ」(車田正美)だったのでした…!!
以来、単行本を読み尽くすと続きが待ちきれずに掲載誌のジャンプを買うようになり、その他のジャンプマンガも面白がるようになり…と、徐々に少年マンガも読む方向へとシフトしていったのでした。
そもそもこの「リングにかけろ」(略称「リンかけ」)は、主人公・高嶺竜児が、姉の菊に学んだボクシングのテクニックにより、ボクサーとして成長しながらチャンピオンを目指す…という、たいへん少年マンガらしい物語です。
ふだんはおとなしい竜児にボクシングを教える姉の菊は、天才的ボクサーだった亡父のセンスをうけついでいます。しかし、女ゆえにボクサーにはなれない。そこで、弟に夢を託します。
…とはいっても、そこらの男なら自力でぶっとばす程度には強く、美人で、おまけにグラマー(という設定)。
名作ボクシングマンガ・「あしたのジョー」になぞらえていえば、菊はいわば、
「女・丹下段平(しかも巨乳)」。
明るくて強くて、主人公やライバルと肩を並べる卓越したボクシングセンスをもつ「菊ねえちゃん」という女性キャラが、物語の中心人物として登場し、ときに重要なアドバイスをし、ときに男をぶっとばす姿というのは、当時の小学生女子の読者(私)にとっては読んでいて気分がスカッとする、爽快感のある大きな魅力要素でした。
そして、この菊ねえちゃんは、途中から竜児の宿命のライバル・剣崎順と恋愛関係になるのですが、この関係がまたよかった。
突出した才能をもつ二人は、ポジション的には敵同士ながらも、いわば「真に理解し合う天才同士」。「もし菊が男でボクサーだったら、剣崎の真のライバルは竜児ではなく菊だったのでは」的な特別な関係性が、私のツボにはまったのでした。といっても、私は当時、キャラ的には剣崎はあまり、好きじゃありませんでした(あまりにキザすぎて)。しかし、当初かなりイヤミなぼっちゃんだった剣崎は、菊ねえちゃんに蹴倒されて、ケリ(!!)を入れられたりしていたのです。自分にそこまでの屈辱を味あわせた女に惚れるとは…!!さすが帝王・剣崎、おそるべし、と思わずその点だけは彼に一目置いた次第です。
それにしても、この少年マンガらしい「リングにかけろ」には、実は私の考える「少女マンガ成分」が入っていたことに最近気がついて、ちょっと驚いてしまいました。
私の考える、「少女マンガ成分」。
それは、「凛々しい少女(女性)が、その凛々しさ故に愛される」というファンタジーです。
たとえば、オテンバの紅緒が、愛する少尉の戦死の報も乗り越えて、社会で働く道を切り開こうと奮闘する「はいからさんが通る」。
また、孤児から大金持ちの養女になりながらも、自分の力で生きたい、と看護婦の道を選ぶ「キャンディ・キャンディ」のキャンディ。
あるいは、乗馬への情熱を持ち続け、両親亡き後も誇りをもって生きる「ロリィの青春」のロリィ。
彼女たちは、おしきせの「女らしさ」ではなく「凛々しさ」をもっているが故に魅力的で、そしてこれらの少女マンガの中ではその凛々しさを理解し、愛してくれる人が現れるのです。
私が好きだったいくつもの少女マンガにひそんでいた「少女マンガ成分」の要素は、意外にも少年マンガである「リングにかけろ」の菊に、そして、もちろん「ベルサイユのばら」のオスカルにも相通ずるものだったんだなあ、といま、改めて思うのでした。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/11/03 10:30:00 いつも心に少女マンガ | Permalink | トラックバック (0)