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2006年11月24日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

美女を妻にした“野獣”の夫たち ヘパイストスとルイ16世

 火と鍛冶の神ヘパイストスアフロディテルイ16世マリー・アントワネット。この二組の夫婦は、S・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』でアントワネット自身が指摘しているくらいに、本当によく似ている。

 ヘパイストスは一流の腕前の鍛冶屋であるが、生まれつき容貌が醜く、足が悪かった。そんな彼の妻は美の女神であった。ルイ16世は狩猟と錠前作りがなによりも大好き、ぽっちゃりしていてハンサムとは言いがたく、不幸なことに先天的性不能であったそうだ。そんな彼の妃は華やかで魅力的なアントワネット
 両カップルとも仲が悪いわけでもないが、だからといって愛し愛される幸福な二人というわけではなかった。アフロディテには不特定多数の恋人たちがいたし、アントワネットには相思相愛の美男子フェルゼンがいた。

 しかし、ヘパイストスとルイ16世には決定的な違いがある。それは、それぞれの性格である。
 二人の性格の違いは、妻の浮気を知った時の反応に現れている。アフロディテは、何といっても美と、そして愛の女神だから、神々から人間まで、あらゆる男性に愛を振りまいていた。そんな妻でも別れたりはしないのだが、ある時ついにヘパイストスの堪忍袋の緒が切れた。ヘパイストスと血を分けた兄弟である軍神アレスとの浮気、これはどうしても許せなかった。アレスはヘパイストスほど賢くもなくどちらかといえば無能だが、かなりの美男。ヘパイストスのコンプレックスは激しく刺激され、誇りは傷つけられた。

 ヘパイストスは妻と浮気相手に復讐した。巧みな技で作り上げた鎖で抱き合うふたりを裸のまま縛り上げ、オリンポスの神々の前にさらし者にしたのだ。もっとも、それを見物した神々は、むしろ寝取られ亭主であるヘパイストスを笑ったようだったが。

 フェルゼンを「野心もない良い友人」と言ったルイ16世だが、怪しげな男から手渡された手紙により、アントワネットフェルゼンの恋愛を知る。ルイ16世は、その時子供のようにただ涙を流した。「愛してはいるが、深い関係ではない」というアントワネットの言葉を信じ、こんな自分では仕方がないと、妻とその恋人を許した。

 あくまで復讐したヘパイストス、許したルイ16世、よく似たふたりなのに、なぜこうも違っていたのだろうか。

 そのヒントは、ヘパイストスの生い立ちにあるように思える。ヘパイストスは神々の王ゼウスと女王ヘラの息子であったが、ヘラは生まれたばかりの息子が、醜く足の悪いことを許せなかった。誇り高いヘラは、神々の女王である自分にふさわしい子供を生めなかったことを恥じ、我が子を海へ投げ捨てた。幸い、海の女神テティスとエウリュノメに救われ、育てられたが、生まれたばかりに受けた理不尽な仕打ちを彼は決して忘れなかった。

 ヘパイストスは母親にも復讐している。例によって自分で作った見事な玉座にヘラを縛りつけ、宙に浮かばせたまま放置したのだ。母親を解放するように言う声にも「母親などいない!」とつっぱねた。ちなみに、ヘラ解放の褒美にヘパイストスが得たもの。それこそが美しい花嫁アフロディテであった。

 こうした生い立ち、生みの母親に与えられた残酷な仕打ちに、怒ることを覚え、理不尽なことには断固反抗する心強き神ヘパイストス。一方、ルイ16世は、史実では三男坊であり、父親と兄たちの死亡によって王太子となった人で、元々も嫡男でないせいかのんびりとしており、大切に育てられたであろう、根っからのお坊ちゃま。自分の処刑の際にも「決して復讐しないように」とわが子に言い残した。

 似ているようで、要の部分はまったく異なるふたりである。(米倉敦子)



●参考文献
「ギリシアの神話 神々の時代」中公文庫 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳
 神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

「ギリシア神話 神々と英雄に出会う」中央公論新社刊 西村賀子著
絵画や陶器画や図版が、ふんだんに挿入されています。読みやすい本です。

「マリー・アントワネット」河出文庫 S・ツヴァイク 関楠生訳

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2006/11/24 10:30:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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