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2006年12月22日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

強く早く格好よく 少年たちの憧れペガサス誕生悲話

 「さながら天に吼ゆるペガサスの心ふるわす翼にも似て…」
 近衛兵時代、馬上で兵たちを指揮するオスカルアンドレはこうたとえた。眩い(まばゆい)ばかりのその姿を瞳を輝かせてみつめていたアンドレ、その心情はオスカルへの恋心というより、少年のような憧れの方が強かったのではないだろうか?

 「強く、早く、かっこいい!!」

 これは、永遠普遍の少年の憧れ三か条である。現代の少年たちは(大人になっても)、飛行機や電車や自動車が大好きだし、近代的な乗り物がない時代では、少年たちの憧憬(どうけい)の眼差しを一身に受けていたのは馬であった。アンドレが憧れのオスカルを名馬ペガサスにたとえたように。

 美しい翼で、神の国まで飛んでいけそうなギリシャ神話一の名馬ペガサス。しかしその誕生には、ある女性の哀れな物語が隠されている。

 娘の名前はメデューサといい、大変美しかった。とりわけその流れるような黄金の髪は輝くばかりで、多くの求婚者が彼女を訪れた。人々が恐れる怪奇に満ちた海の王ポセイドンもそのひとりだったが、彼は求婚者としては、とても行儀が悪かった。ポセイドンは、よりによって処女神アテナの神殿で、メデューサを我がものにしたのだ。

 アテナは烈火のごとく怒った。そして、女神の辛らつな怒りの刃は、気の毒なことにメデューサの身にだけ降り下ろされた。

 鋭い青銅の鉤爪(かぎつめ)、両眼は飛び出さんばかりに見開かれ、大きく開かれた口からは猪の牙のような鋭い歯が見え、なによりあの美しかった金髪は、醜悪な蛇となって身をくねらせている。
 あまりにも醜いその顔を見た者は、たちまち石に変わってしまった。メデューサは、今や怪物だった。
 
 その時メデューサは、ポセイドンの子を身ごもっていた。しかし、月が満ちても怪物であるメデューサには子を産み落とすことができない。
 メデューサを哀れんだ姉たちは、妹と運命を共にした。恐れられ蔑まれながら、メデューサ姉妹はひっそりと暗い洞窟の中でただ待っていた。

 長い年月が過ぎたある日、ついにアテナに導かれて英雄ペルセウスが、怪物メデューサの首を切り落とす。
 メデューサは死んだが、死んだことにより、彼女の苦難も終わった。
 残酷な運命から解き放たれたばかりではない。メデューサがその腹に宿し続けていた名誉を解き放つことができたのだ。

 手にした三叉の矛で大地を打ち、馬をはじめてこの世に生み出したのはポセイドンであり、この神は多くの名高い馬の父となっている。ポセイドンの子である馬の中でも、最も美しい白雪のような白馬。そして、メデューサの子であることを誇るような黄金のたてがみに、黄金の翼。
 翼を広げた最も高貴な動物ペガサスが、母の首のない胴からようやく生まれ出たのだ。
 この上ない醜い怪物の遺体から、この上ない美しい動物が誕生する光景は、どんなものだっただろう。
 
 ペガサスの名は、憧れの代名詞。 
哀れな母親の名誉は、息子の名が輝き続けるかぎり、二度と傷つくことはないのである。(米倉敦子)
 
    
参考文献

『変身物語』オウディウス著 中村善也訳 岩波文庫

『ギリシャ神話 神々と英雄たち』バーナード・エブスリン著 三浦朱門訳 教養文庫
ロマンチックな語り口調で、楽しく読める神話集です。

『ギリシアの神話』カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫
神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

『ギリシア神話 神々と英雄に出会う』中央公論新社刊 西村賀子著
絵画や陶器画や図版が、ふんだんに挿入されています。読みやすい本です。

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2006/12/22 10:30:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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