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2006年12月15日 (金)

いつも心に少女マンガ

サン・ジュストのフルネームが言える理由

ルイ・アントワーヌ・レオン・フロレル・ド・サン・ジュスト

歴史音痴の私ですが、この長~い名前だけは少女時代にばっちり暗記。それから早20数年、ヘタすると先週はおろか、昨日のこともおぼつかない、そんな記憶力に不安を感じまくる現在にいたっても、このフルネームは忘れることなくしっかり記憶しているのでした。
私が、サン・ジュストのフルネームを言える理由。
それは当然、「ベルばら」で彼を知ったからなのです。

貧しい民衆の味方として、フランス革命の中心人物となったロベスピエール。
そのロベスピエールの片腕として、“死の大天使”と呼ばれた美貌の革命家、それが、サン・ジュストです。
「ベルばら」において、サン・ジュストの登場は、鮮烈な印象を読者に与えます。
そう、歴史音痴の一読者であった私でも、思わずフルネームを暗記したくなるような魅力が、「ベルばら」の彼にはあったのです。

その理由の一つは、なんといっても、彼の中性的な美しさ。サン・ジュストは、オスカルも最初に見たときは「男装をした女」だと勘違いしたほどの美形として描かれます。
そしてもう一つの理由は、あまりにも彼がドラマティックな存在であることが作中で示されるからです。

新聞記者ベルナール・シャトレのもとでオスカルと出会うことになるサン・ジュストは、そのとき22歳で、エロティックな風刺小説「オルガン」を書いたことでおたずね者の身。そして、作中のナレーションによって、「26歳の若さでロベスピエールのとともに断頭台の露と消えた」と紹介されるのです。

22歳から26歳のたった4年のあいだに、この美貌の革命家は、革命という巨大な歴史の渦の中で、なんと劇的な変転の運命をたどるのか…!!

…というのは今の私が思うことで、おそらく少女時代の私はただただ「え~、このキレイな人、そんなにすぐ死んじゃうの!?」程度のことしかわかっていなかったと思います。
ただ、そんな子どもだった私にも、きっとサン・ジュストの危うい魅力は感じられたのでは…と、今読み返して改めて感じます。

たとえば、ベルナール・シャトレにかくまわれていたサン・ジュストが、オスカルがおたずね者の自分を逮捕しに来たと勘違いし、オスカルに銃を向け、逆にオスカルから威嚇されるエピソード。
短いシーンですが、ここでのサン・ジュストは、若く美しく才能豊かで、そして同志に対しては幼さすらのぞかせるほど素直で、しかし同時に身を守るためなら躊躇なく銃を向ける残酷さをもあわせもつ人物として描かれています。
 この印象は、オスカルの死後、フランス革命が起こったのちに国民公会でルイ16世の処刑についての討議が行われた場面でも変わりません。
最年少の議員として、第一声がうまく出せず美しい頬を赤らめるサン・ジュストのういういしさ。そして、そこで起こったヤジを、一転して冷ややかな一瞥で黙らせる迫力。
この日サン・ジュストは、「国王を処刑すべし」という堂々たる名演説をやってのけ、議員たちの投票の結果、たった一票の差で、ルイ16世の処刑が確定するのでした。

 また、マリー・アントワネットをめぐる裁判においても、スキャンダラスなでっちあげでアントワネットを陥れようとした同志に対し、「あんなやつが仲間かと思うとぞっとする!」と憤るロベスピエールのかたわらで、サン・ジュストは顔色一つ変えず、「近いうちにギロチンいきだねえあの男も」と言い放ちます。
革命を成功させたとはいえ、この過激とも言える潔癖な酷薄さが、近い将来、ロベスピエール、そしてサン・ジュスト自身を断頭台へ追いやることになるわけですが、そのことを予感させる、短いながらも印象的なシーンです。

 こう振り返ってきて、池田理代子氏の描写が、けっして長々と説明するわけではないのに、サン・ジュストの人物像をあざやかに浮かび上がらせていることに、改めて驚きます。

 「ベルばら」は、史実とフィクションを実に巧みに織り交ぜた物語で、オスカル、アンドレをはじめとした主要な人物は池田氏の創作ですが、このサン・ジュストは実在の人物です。
歴史は大の苦手なのに、「ベルばら」を読むことでフランス革命の一部分に妙に詳しくなれ、またそこに描かれたサン・ジュスト像に魅了され、せっせとフルネームを暗記した私。おそらく「ベルばら」なくして、私がサン・ジュストのフルネームを覚えることはなかったでしょう。

 そしてきっと、「ベルばら」という作品は、私だけではないたくさんの読者を、歴史へいざなう大きなきっかけとなったに違いない。
そう私は確信しているのでした。(川原和子)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2006/12/15 10:00:00 いつも心に少女マンガ | | トラックバック (0)

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