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e-book Japan ベルサイユのばら

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2007年1月19日 (金)

いつも心に少女マンガ

ベルばらの悪女NO.1は?

 『ベルサイユのばら』には、数々の悪女が登場します。ルイ15世の愛妾デュ・バリー夫人、首飾り事件を画策したジャンヌ、そしてアントワネットにとりいって数々の特権をほしいがままにしたポリニャック伯夫人。彼女たちは、作品の中でそれぞれ強い印象を残しています。

 『ベルばら』でのデュ・バリー夫人は、当時の国王ルイ15世の寵愛をかさにきてぜいたくと浪費のしたいほうだい。一時はアントワネットさえ屈服させた権力欲の強い女性として描かれますが、実際の彼女は平凡で素直な優しい性格だった、という意味のことを池田理代子氏自らが著書『フランス革命の女たち』(新潮社)のなかで書かれています。

 ベルばらで描かれるデュ・バリー夫人の意志の強そうな美貌は池田氏の創作に負う部分が多く、実際の彼女はむしろ男達の謀略に翻弄され、流されてたどりついた先がたまたま権力の場だったのでは、と思われる女性だったようです。

 一方、『ベルばら』のジャンヌはというと、ロザリーや母との貧しい暮らしから抜け出したい、贅沢がしたい、という燃えるような野心をもって、家族を捨てて貴族になりすまし、ときに恩人の殺人すら辞さぬなりふりかまわなさで、ついには王妃を陥れる首飾り事件で、一大スキャンダルを巻き起こします。

やがて逮捕され、囚人のしるしの焼きごてを押されるときでさえあまりに激しく抵抗したため、市民のあいだにえん罪ではないか、という噂が広まったほど。
そんな彼女の辞書に反省の文字などなく、法廷では嘘をついて王妃を辱め、脱獄した挙げ句、でっちあげだらけの暴露本を出してそれがベストセラーになります。

ジャンヌの強烈な上昇志向は、貧しさから抜け出てぜいたくがしたい、という私利私欲が原動力でしょう。とはいえ、当時のフランスの、厳然たる身分制度が存在し、風穴のあけようがなかった時代状況を考えれば、このジャンヌの悪行には、一種の痛快ささえ漂い、ある意味で彼女はベルばらの「悪のヒロイン」とさえいえる気がしてきます。

 ではポリニャック伯夫人は、といえば、『ベルばら』の彼女は、はかなげで優しそうな容姿にひかえめな態度で王妃に近づき、やがてその魅力にすっかり夢中になったアントワネットから、お金や官位を欲しいがままにしてしまいます。

 それだけではなく、かつての恩人とは知らずロザリーの育ての母ラ・モリエールを馬車ではねておきながら「もんくがあったらいつでもベルサイユへいらっしゃい!」と捨て台詞を残して見殺しにし、果ては娘のシャルロットを政略結婚させようとして、結果的に自殺に追い込んでしまいます。
 その後、もう一人の娘ロザリーを自分の元にひきとりますが、それはシャルロットの替わりに侯爵へ嫁がせるため。
とまあ、こちらもまた、ある意味で自己保身の徹底した見事な悪女ぶりなのですが、なぜかジャンヌのような痛快さはなく、どこかもやもやとした居心地の悪さを感じてしまうのです。

 その理由の一つは、ポリニャック伯夫人の「悪の自覚の薄さ」にある気がします。
 「貧乏から抜けだして、ぜいたくをしたい!」という強烈な欲望を自覚しているジャンヌと比べて、ポリニャック伯夫人の言動を見ていると、彼女はひょっとして、自分を「悪」なんて全然、思ってないのでは?と感じます。
 ロザリーを捨てたのも要するに「しかたなかった」ということで深くは反省せず、ロザリーを忘れたことはなかった、と言いながらも結局ひきとるのは政略結婚の道具、という自分の保身のため。

 当時の貴族としては当たり前の考え方なのかもしれませんが、ポリニャック伯夫人は、アントワネットへのおねだりやいやがる娘に政略結婚を強いることは、私利私欲というよりはむしろ、家族が裕福に暮らしていけるように、という当然の配慮をしているだけですわ」と平然と言いそうな感じです。
 たとえそれが何かを踏みにじることになっても、そこには気がつかないように目をそらし、自分に都合のいい理屈を、自分で信じこめてしまう。
彼女には、そんな恐ろしさを感じてしまうのです。

 ポリニャック伯夫人は、虫も殺さぬやさしい顔で権力者にすり寄り、都合が悪くなると己のやさしげな容貌と女の武器「涙」で、うまく切り抜けてしまいます
そんな彼女の姿には、18世紀のフランスのみならず、「いつの時代にもいそうだなあ…」と感じさせるリアリティがあり、現実的には、ジャンヌの上昇志向むきだしのたくましさより、ポリニャック伯夫人の「清楚な弱々しさを装ったしたたかさ」の方が、ずっと摩擦少なく世の中をわたっていけてしまうんだろうなあ…と感じてしまい、なんだか微妙な気持ちになってしまうのでした。

 ともあれ、悪意はなくとも、己の心のおもむくままに浪費を重ね、結果的に多くの民衆を苦しめた無邪気なマリー・アントワネットの「無自覚な悪女」っぷりには、結局誰もかなわないのかもしれません。(川原和子)

《関連リンク》
ベルばらKids登場人物事典:悪女たち
11/18のベルばらKidsは「悪女が見せた人間味」

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/01/19 11:00:00 いつも心に少女マンガ | | トラックバック (0)

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