2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« エカテリーナとアントワネット♪12/23ベルばらKids感想 | トップページ | 今週のベルばらKidsは「画家の恋の行方は」 »

2007年1月12日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

庶民に愛されたトリックスター・ヘルメス

北欧神話ならばロキ、日本神話ならばスサノオ、そしてギリシャ神話にはヘルメス。彼らは、トリックスターと称される神々である。周囲を混乱させ、時には神の秩序をも崩壊させるやっかい者とされているトリックスター。しかし彼らはあくまで「スター」であり、ずる賢くひょうきんなその活躍はいつも人気の的だ。

ヘルメスのトリックスターとしての性格は、実は彼自身が存在もしない時に作られた。彼の父である神の王ゼウスが愛人マイアを訪れるのは、きまって嫉妬深い正妻ヘラが眠った後であった。妻が寝たあと、夜な夜なこっそりと愛人宅へと通うゼウス。このあきれた父親のずる賢さが、愛の結晶たるヘルメスに色濃く受け継がれた。
一方、昴(プレアデス)七姉妹のひとりであった母マイアは、大変慎み深い性格であった。神格も決して高いわけではないマイアは、キュレネ山の洞窟でひっそりと暮らしており、そこでヘルメスも産んだのだ。

しかし、ゼウス似のヘルメスは生まれ落ちた直後からすでに、ちっとも慎み深くはなかった。産着をまとったヘルメスは、このまま薄暗い洞窟の中で黙っていたら、自分は神として誉れ(ほまれ)ある地位を占められないに違いないと考えていた。自分はあの輝けるゼウスの愛息子、アポロンくらいの崇拝を受けて当然だというのに!

ヘルメスはすぐさま行動を起こす。アポロンの飼っていた雌牛50頭をあっという間に盗み出した。びっくり仰天し、キュレネ山まで怒鳴りこんできたアポロンに
「父上に誓って言います!僕、牛なんてものは知らないし、赤ちゃんだからそんなことできないよ。」
としらばっくれた。さらに、自分を抱き上げた兄におならとくしゃみまでお見舞いした。

父親ゼウスの前でも、生まれたばかりのあどけないわが身を武器に詭弁(きべん)をふるう。
結局はアポロンもゼウスもこの小ざかしい、あまりに早熟な天才児を気にいってしまう。アポロンはヘルメスが作ったうるわしい音色をかなでる竪琴をもらい、その代わりに牧畜の神としての座をゆずりわたしたのだった。
ヘルメスは、神々の伝令、商業、盗み、詐欺、雄弁、旅、音楽、そして死せる魂の導き手などなどマルチな能力を有すことになり、人々の崇拝を広く集める存在となった。

このエピソードは、『ヘルメース讃歌』にある。古代ギリシャ人は、卑怯ともいえる策略をもちいてでも、自らの権利を獲得するヘルメスを賛美し、「でかした!」と喝采を送ったわけだ。貴族的な神であるアポロンに対してヘルメスは(この行動からいっても)庶民派な神である。ヘルメスの小気味よい活躍は、搾取(さくしゅ)され続ける庶民の憧れであり、やはり彼は「スター」なのだ。

ベルサイユのばら」におけるヘルメスの申し子といえば、“彼”をおいてほかにないだろう。

「貴族がぬすんだものを、とりかえしているだけだ!」
これは、革命直前のパリで貴族の邸宅を荒らしまわった、パリの鼠小僧「黒い騎士」ことベルナール・シャトレが、オスカルにいった言葉だ。ベルナールは平民出の母親と貴族の父親を持ち、幼い頃、貴族の子供としての生活を体験している。どちらの暮らしも知っているからこそ、貴族と庶民の間にある不平等さがよく分かり、それが許せなかったのかもしれない。

元盗賊で、人にものを伝えるジャーナリストであり、演説も巧みなベルナールは、盗賊の神であり、神々の伝令であり、雄弁の神であるヘルメスの申し子。不平等に敢然と立ち向かう姿は、まさにヘルメス的精神の賜物(たまもの)である。

ベルナールは、フランス革命後を描いた『栄光のナポレオン エロイカ』において、皇帝という高みに登ろうするナポレオンの暗殺に失敗し、アランと共に銃弾に倒れる。
最後まで庶民の味方という信念を守っての死であった。(米倉敦子)

■参考文献
「ホメーロスの諸神讃歌」筑摩書房 ホメーロス 沓掛良彦訳

「ギリシアの神話 神々の時代」中公文庫 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳
  神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

「変身物語」中村善也訳 オウディウス著 岩波文庫

「ギリシア神話 神々と英雄に出会う」中央公論新社刊 西村賀子著
絵画や陶器画や図版が、ふんだんに挿入されています。読みやすい本です。

「栄光のナポレオン エロイカ」中公文庫コミック版 池田理代子著

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/01/12 10:40:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/13439543

この記事へのトラックバック一覧です: 庶民に愛されたトリックスター・ヘルメス: