いつも心に少女マンガ
日常の中のベルばら名台詞
それは、クリスマス・イブのこと。
たまたま新宿に出る用があった私は、たいへんな人混みに遭遇し、思わずこう口走りました。
「きょうは…新宿はたいへんな人ですこと!」
…え?なんのことかおわかりにならない?
これは『ベルサイユのばら』のなかで、フランスに嫁いだばかりのマリー・アントワネットが、当時の国王・ルイ15世の愛妾、デュ・バリー夫人にかけた言葉、
「きょうは…ベ…ルサイユはたいへんな人ですこと!」
をもとにした言葉ですわ!
『ベルばら』において、まだ幼いアントワネットは、国王の寵愛を受けているとはいえ元は娼婦だったデュ・バリー夫人に反感をもちます。そして、出自の卑しいデュ・バリー夫人に挨拶をすることは、フランス王太子妃としてのプライドが許さない、と彼女を無視し続けます。しかし、アントワネットの態度に激怒したルイ15世からの圧力に負け、ついに新年会の席で、デュ・バリー夫人に声をかけるのです。
そのときの言葉が、この、
「きょうは…ベ…ルサイユはたいへんな人ですこと!」
なので、この台詞を言うときは、やや不本意さをにじませ目をそらしつつ言うと、よりアントワネット感が出ることうけあいです。
銀座だろうが、表参道だろうが、テレビなどで人混みを見たりするとすかさず、この言葉を口走ってしまう私なのでした。
こんなふうに、あまりに何度も『ベルばら』を熱く読み返しているうちに、数々の台詞が自分の中に刷り込まれてしまい、つい日常の中で、『ベルばら』の台詞でしゃべってしまう。そんなことって、ありますよね。
……え?私だけですか?
いえ、他にもそんな人は、きっといらっしゃるはず!!…たぶん!!
たとえば私の場合は、大好きなマンガの話をしたくて、つねにうずうずしています。なので、ときどき幸運にもマンガ好きの集まる会に参加させてもらって、思う存分マンガの話ができたときなどは、もう嬉しくて嬉しくて、思わず、
「あ……胸がはじけそうに苦しい……こんなたのしい世界があったなんて……!」
と、仮面舞踏会に参加したときのアントワネットの台詞を、頬を紅潮させてつぶやいたりしてしまうのです。
私にとって、マンガ話のできる集まりは、いわば「マンガ舞踏会」。
…いえ、ホントに踊ったり仮面をつけたりはしませんが、あくまで比喩として。
また、最近引っ越しをしたのですが、いざ住んでみるとお風呂のお湯の出がものすごく悪かったり、なのに長時間かけてお風呂にためたお湯が、時間が経つと漏れて減ってしまったり、キッチンの水道レバーを上にあげたらいきなりレバーがすぽっととれたり(!!)と数々のトラブルが続出。思わず、とれた水道レバーを床に投げつけたい衝動にかられ、「なんじゃあこりゃあ!」と泣きたくなったりしました。
しかしそんなときには、黒い騎士をとらえたオスカルが復讐心から鞭をふりおろそうとしたとき、アンドレがオスカルをいさめて言う言葉、
「武官はどんなときでも感情で行動するものじゃない!!」
を念仏のごとく唱えて、
「そうだ、武官は感情で行動してはいけない!」「アンドレはいいこと言うなあ」
と気を鎮めているのです。
…まぁ、そもそも私は武官じゃないわけですが、それはそれとして。
ちなみにこの「武官はどんなときでも…」という台詞を言ったアンドレ自身が、黒い騎士によって片目を傷付けられ失明していたことを思うと、「おなじことをしてやる!!」と激高するオスカルを「そうしてどうなる!?いみのないことだ」と止めたアンドレの心の広さを感じて、じ~んときます。
そして私も気を取り直し、レバーを投げつけたりせずに、「アンドレ、よい言葉を…ありがとう!」と感謝しつつ、心静かに不動産屋さんに修理のお願いの電話をするのでした。
そういえば以前、マンガ好きの女友達と、「生活の中で、思わずベルばらの名セリフが頭をよぎることってありますよね~!」「ああ、ありますあります!」という話になったときのことです。彼女はさらりと、
「私が心の中でよく使うのは、
『そのショコラが熱くなかったのをさいわいに思え!!』
という台詞ですよ」
と言われました。
…これは、アンドレが、オスカルに求婚したジェローデルに挑発され激怒し、ジェローデルの顔に手にしたショコラをかけて叫んだ、怒りの凝縮された言葉。
…ふだん温厚な友人が、心の中で、いったいどなたにショコラをかけておられるのか…知りたいような知りたくないような…。
とにかく、非常に気になるところです。
とまあこのように、気がつくと非常にナチュラルに、ベルばらの名台詞を日常生活でつかっている私の人生。もはや生活の一部です。
おそらくこれからも、私の生活の折々で、ベルばら名台詞は活躍することまちがいなし、なのでした。(川原和子)
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/01/05 11:00:00 いつも心に少女マンガ | Permalink | トラックバック (0)