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2007年2月 9日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

母の予言は聞くもの テティスとマリア・テレジア

 未来のルイ16世との結婚式で、幼い花嫁アントワネットが残した結婚証書のしみ。それは、“不吉”と周囲にささやかれたが、この結婚にはじめから不吉な予感を覚えていた人物がいる。アントワネットの母、オーストリア女帝マリア・テレジアである。

 もちろん、オーストリアの安全と繁栄のため、女帝自身が決めた政略結婚だ。しかし、母親としての心が「王冠や王妃などという地位は、あのあまったれですなおで、考えることのきらいな平凡な娘にとって、不幸をもたらすものにすぎないのでは」としきりに警告してくるのだ。マリア・テレジアは女帝としての立場と母親としての立場に引き裂かれながら、嫁いだ娘に手紙を送り続ける。「勉強しなさい」「読書しなさい」「悪い仲間とは遊ばないように」「派手な服装はおよしなさい」

 王妃という立場もかえりみず、自分の楽しみのためにわずかなお気に入りとともにトリアノン宮にこもってしまった娘に母は、「いまにきっとおそろしい不幸が、あなたにおそいかかってくるにちがいない」とはっきりと悲劇的な予言をした。

 ギリシャ神話でも母親から悲劇的な予言をされた人物がいる。それは、トロイアの英雄アキレウスである。
 彼の母親である海の女神テティス神の王ゼウスに強いられて人間と結婚し、アキレウスを産んだ。テティスは我が子を深く愛したが、同時に悲劇的な運命を予言しなくてはならなかった。「アキレウスはトロイアの地で、若くして命を落とすであろう」と。

 自ら予言したものの、息子の哀れな運命をどうしても救いたい女神は、まず幼子のアキレウスを冥府の川にひたして不死にしようと試みた。その時、アキレス腱の部分だけひたせなかったため、それがアキレウス唯一の急所となってしまった。

 不死にしそこなった息子を戦場であるトロイアへ送ることだけは、何としても避けねばならない。テティスは金髪の美しい少年だった息子を女装させ、彼をトロイアの戦場へと誘う手から逃れさせようとした。
 乙女たちに交ざったアキレウスを探しあぐねたオデュッセウスは、ラッパを鳴らし、武器のぶつかり合う音と雄叫びをあげさせた。アキレウスはこれを敵の来襲と思い込み、乙女の衣装を引き裂き、剣と楯を手にして自らを知らしめてしまった。
 もはや息子を止めることはできない。テティスは嘆きながらも引き下がるしかなかった。

 戦場に赴いたアキレウスは、見事トロイアの総大将ヘクトルを討ち取ったが、まさにそのとき、母の予言も完遂してしまい、唯一の急所を矢で射られて、短い生涯を終えてしまう。だが、その勇名は神にも並ぶほどに輝き続けた。

 アントワネットも母親の存命中はその警告を受け入れず、予言は的中してしまった。しかし、「いつになったら目をさますの!?」という母親の最後の叫びは、遅すぎではいたが確かに娘に届いた。アントワネットは、フランス王妃として、マリア・テレジアの娘として堂々たる最後をとげたのだから。

 それにしても、娘にむかって「まじめに勉強しなさい!」と口やかましい母親。息子にむかって「危ないことはおよしなさい!」と目くじらをたてる母親。誰でも一度はそんな母の言葉を「うるさいなあ!」と思いながら聞いたことがあるのではないだろうか。でも、母の言葉はやはりつつしんで聞くべきなのだろう。手遅れにならないうちに。(米倉敦子)

参考文献
「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク著 中野京子訳 角川文庫
「世界史レッスン」の中野京子氏による待望の新訳です!他の訳で読んだことある方も、ぜひもう一度感動してください。

「ギリシャ神話集」ヒュギーヌス著 松田治・青山照男訳 講談社学術文庫

「ギリシアの神話 英雄の時代」カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫
 神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

「イリアス」ホメロス著 松平千秋訳 岩波書店

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/02/09 10:30:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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