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2007年2月 2日 (金)

いつも心に少女マンガ

ルイ16世の美質とその不幸

 『ベルサイユのばら』の魅力の一つは、史実と創作との絶妙な融合でしょう。
実際のフランス革命期に存在した人物や事件に、作者の池田理代子氏が新たに創造したキャラクターをおりまぜて、ぐいぐいと読者をひきこんでいきます。

 もちろん、マリー・アントワネットや、その夫であるフランス国王ルイ16世は、実在の人物です。
少女時代から何度も読んだ『ベルばら』での印象から、私にとっては「いい人」イメージの強いルイ16世でしたが、少女マンガということでか(?)、描かれなかったさまざまな事情があるようです。

その最たる部分は、ルイ16世とアントワネットが結婚してから、なんと7年の長きにわたり、夫婦としての結びつきがなかった、ということです。
原因はルイ16世の肉体的な理由で、結局わざわざウィーンから来訪したアントワネットの兄ヨーゼフ2世の説得により、ルイ16世は外科手術を受け、その翌年にはアントワネットは妊娠・出産することになるのです。
このエピソードは、池田理代子氏の著書『フランス革命の女たち』(新潮社)のなかで紹介されています。
…が、私はなぜかたまたま、旅先の女3人部屋でこのエピソードを知り合いの女性に教えてもらい、「な、なんだってー!!」と部屋は騒然。
「ちょっとルイさん、それは外国からお嫁に来てる奥さん、かわいそうだよ」
「うんうん(とうなづく)」
…と、部屋は一瞬にして、お昼の身の上相談番組みたいな雰囲気になったのでした。

実際、嫁ぎ先の異国で、国中が跡継ぎたる王子の誕生を待ち望んでいる中での、7年にわたる“生殺し”ともいえる状況のストレスから、アントワネットは崇拝者たちとの遊びや、とんでもない浪費で寂しさをまぎらわせようとした…という説がアントワネットに対するひとつの評価として定着していたそうです。だからといってあの浪費っぷりはなあ、と思う反面、アントワネットのプレッシャーを考えれば、同情の余地もあるなあ、と思ったり。

 『ベルばら』に描かれるルイ16世は、太っていて華やかさには縁遠いけれど、誠実でやさしい人物です。国民を愛し、質実で、趣味は狩猟と読書と錠前作り。

しゅ、趣味が錠前作り…マニアックすぎる!!

…とアントワネットならずとも思いますが、『ベルサイユのばら その謎と真実』(池田理代子監修 JTBパブリッシング)によると、ブルボン家の男子は職人修行をして錬金術や印刷術、家具職人の技術をもっていたりしたので、実際にはそう変わった趣味だったわけでもなかったようです。

しかし巨大なベルサイユ宮殿に君臨する王としては、華やかな社交より読書を好むルイ16世は、かなり変わった君主だったのかもしれません。
享楽的な美しいアントワネットと、質素で内向きな趣味を愛するルイ16世では、今で言うとギャルとアキバ君のようなカップル。
お互いを理解するのは難しかったんだろうなあ、と思わずにいられません。

 考えてみると、ルイ16世の美質は、なにかを「する」ことより「しない」ことの方に表れていたように思えます。
愛人をもつのがあたりまえの時代に浮気も女遊びもしない。
豪華な衣装や賭け事、舞踏会にも興味がない。
平時であれば問題なくよき王として君臨できたのかもしれませんが、積もりつもったきびしい財政の危機など問題が山積みだった18世紀のフランスの王としては、「妻の浪費をいさめること」を「しない」王は、やはり歴史の濁流に飲み込まれてしまう運命だったのかもしれません。
妻アントワネットにも十分に評価されていたとは言い難いその控えめな美質は、時代とも立場ともかみあわなかった。
そのことが、ルイ16世の不幸だったのかもしれません。

 そんなルイ16世ですが、『ベルばら』においては、死を前にしたときには、毅然とした王らしい態度をとります。
革命下のパリから国王一家を逃亡させようとするフェルゼンに、国民との約束をやぶるわけにはいかない、もう逃げない、という決意を静かに告げます。
そして、残される王子にはけっして復讐を考えないことを約束させ、「わたしは罪なくして死んでゆく」「しかしわたしを殺そうとする者たちをわたしは許そう」と言って断頭台にのぼるルイ16世。それは国民が王にくだした「死」という判決に直面し、その過酷な運命を真正面から受け止めた、「りっぱな最期」といえます。

 それにしても、200年以上前の人物だというのに、なんとも人間くさい弱さと、それでいて高貴さ、懐の深さも感じさせるルイ16世という人物像。
『ベルばら』では、その弱さも強さも、「現代に生きていたら…」なんて想像をさせてくれるほど身近に感じる人物として描かれていたのだなあ、と改めて感じるのでした。(川原和子)

※半年のおつきあいありがとうございました。「いつも心に少女マンガ」は、今回をもって終了いたします。

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/02/02 11:00:00 いつも心に少女マンガ | | トラックバック (0)

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