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2007年3月16日 (金)

アニばら解体新書

ロザリー豹変す

水戸黄門のような“勧善懲悪”「ベルばら」で私達を楽しませてくれた長浜監督は、第13話で突如降板となり、「アニばら」第14~18話は監督不在のまま製作されました。

ところでテレビアニメは監督がいなくても作れるモノなのでしょうか? 否、14~18話は一応形にはなっているものの、「小説を一文ごとに切り取ってばらばらにして、それを元の小説を読んだことのない人に貼り合わせてもらった」ようなちぐはぐ感に満ちています。なぜこんな奇妙な仕上がりになってしまったのでしょうか?

日本のアニメ番組は、徹底した分業制度に支えられています。作画担当者によってキャラクターの顔が別人のように変わることも珍しくありませんし、演出家や脚本家も回によって違うのが普通です。
それら個別の仕事をコントロールし、一つの統一された作品となるよう導くのが監督ですから、その役割は想像以上に重要です。不在とまではいかなくとも監督の意図がスタッフに上手く伝わっていない作品ですと、回ごとに登場人物の性格が変わっていたりします。そして展開に矛盾が生じていき、やがて物語が破綻する。これまで、そういった理由で失敗作になってしまったアニメ番組が少なからずありました。
 
監督不在というトラブルに見舞われた「アニばら」は、本来であれば失敗作になるはずでした。それが賛否両論あれど、とにかく次代に残る作品になったのは、ひとえに出崎統という強力な個性の持ち主を監督に得たことによる部分が大きいのではないでしょうか。

というわけで、今回は長浜監督、そして監督不在を経て出崎監督への変容をもっとも象徴的に表したキャラクター、ロザリー&シャルロットにスポットを当てたいと思います。

長浜監督の造形したロザリーは、原作よりさらに「おしん」タイプで、「つらくても悲しくてもじっと耐える、健気な薄幸の美少女」というキャラが強調されていました。監督不在中もこれは引き継がれ、「泣き虫だけどオスカル様だいすき」というのがロザリーの基本設定でした。

しかし、出崎監督に変わった第19話「さよなら、妹よ」。
「ポリニャック伯夫人が自分の実の母親」と知ったロザリーは、なんと、ポリニャック家の馬車を待ち伏せして夫人に銃口を突きつけます。しかし、結局銃をおろしてしまい、オスカルの胸に泣き崩れるロザリー。そんなロザリーに、オスカルが優しく話しかけます。
「撃てるわけはない。おまえのような優しい娘が」
「今度はこの娘(シャルロット)が悲しむところだった」。
あー、オスカルっていい人だ……(しみじみ)。

それはそれとして、この間までオスカルに抱きついてめそめそ泣いているキャラだったはずのロザリー、いきなり違う人になっていますが、いいんですか、これ? 顔は心なしか大人っぽいし、目つきもするどくなって、なんだか原作のいうところの“春風のような”というより“疾風のごとく”って感じなんですが。

とまどう視聴者をよそに物語は進み、シャルロット自殺のエピソードにたどり着きます。原作では名前しか登場しなかったド・ギーシュ公爵が、ロリコン丸出しで執拗にシャルロットに迫り、彼女の手にキスをします。それを受けて発狂してしまうシャルロット。いきなり高笑いをはじめます。

「あっはっはっはっは、あーーーっはっはっはっはっ」
 
『発狂すると高笑いする』という妙な偏見に基づいた、ステレオタイプな演出にも関わらず、ここまでの間に視聴者はシャルロットにすっかり感情移入させられています。もうそんなツッコミを入れている場合ではないのです。
そして、ついに屋根の上から飛び降りるシャルロット。かつてオスカルからもらった白いばらを手落とし、ドレスのドレープをゆらしながら、どこか幻想的に地面に落ちてゆきます。

 その凄惨な美しさに息を呑んだ瞬間、暗転。
 次に「グシャッ」というきわめて即物的な音が耳に飛び込んできます。そして、やっと白いばらと地面に伏したシャルロットの顔が浮かび上がる。幻想的な画の連続の中にあって、リアルな「グシャッ」という音が視聴者の耳に残ります。
 
 呆然とするオスカル&アンドレ。そして、視聴者。しかし、ロザリーはくるりと背を向けて語ります。
「血がつながっているからといって、一緒に暮らしたこともない。言葉だってひとつふたつかわしただけ」
「悲しくなんかない。(中略)血のつながった赤の他人だっていていい…!」

 そこまで語ってまたこちらを向き直り
「そうですよね…!」
「オスカル様、私の妹が。可哀相に、たったの十一で…」
と号泣します。
 
 ええーっ! いい話なんですけど、あなた誰ですか? 前回までのロザリーと違う人じゃないですか?! これまでの18話を通して練り上げられてきたロザリーのキャラクター設定、完璧無視してますよ出崎監督!
 なんだか「前回までと違うけど、おもしろいからOKっしょ?!」という出崎監督の声がどこからか聞こえてくるような仕上がり。

 ここで、私達は「自分がいいと思ったことをするのに全くためらわない」監督が、新しく就任したことを知ります。そしてこれから、出崎監督によって大幅仕切り直しの上再出発することになった「アニばら」に、今後何度も仰天させられることになるのです。(池田智恵)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/03/16 11:00:00 アニばら解体新書 | | トラックバック (0)

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