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2007年3月 9日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

窮地の王たちの解決策は? ゼウスとルイ15世

「まあまあ、たかがリンゴ一個のことじゃないか」
愛想笑いを浮かべる神々の王ゼウスだが、内心は冷や汗ものだっただろう。
ゼウスの前に居並ぶのは、絶世の美貌を誇る大いなる3人の女神たち。
黄金の御座(みくら)に座す神々の女王である正妻ヘラ、燦然(さんぜん)と光を放つ黄金造りの武具で身を固めた愛娘アテナ、黄金に輝くと称えられる息子の嫁アフロディテであった。いずれも選り抜きの女神、そしてゼウスにとっては身内の女たちである。

事の始まりは、海の女神テティス英雄ペレウスとの結婚式でのこと。全ての神々が招待されたこの大イベントに、ひとりだけ招かれなかった女神がいた。彼女はエリス。不和を司る女神であったため、あまりにも縁起が悪いと呼ばれなかったのだ。

エリスはこの侮辱に黙って耐えることはなかった。それならば、自分のこの力で思い知らせてやろう。
悪知恵冴えるエリスが使ったのは、ただ一個のリンゴであった。しかし、それには「一番美しい女神へ」と刻まれていたのだ。

このリンゴは、和気あいあいと新しいカップルを祝っていたはずの女神たちに、目論見どおり見事「不和」をもたらした。自分の美貌に関しては並々ならぬ自信と誇りを持つ女神たちは、みんなそれぞれリンゴの所有権を主張して争った。そして、最終的にヘラ、アテナ、アフロディテの三つ巴となったのだ。

神々は、王であり家長でもあるゼウスが、このやっかいな問題を解決するものと期待している。妻も娘も嫁もかつてないほど彼に熱い視線をそそいでいる。その期待はゼウスにも分かったが、いずれもあからさまにライバル意識むき出しで一歩も引かぬ様子の女神たちである。誰を選んでもその他二人から深く恨まれるに決まっているのだ。

このゼウスのように、フランス国王ルイ15世も、身内の女たち、すなわち愛人デュ・バリー夫人と孫の嫁アントワネットの間に挟まれた経験がある。たかだかアントワネットがデュ・バリー夫人に声をかけないで無視しているという、はたから見るとくだらないことがきっかけであった。

しかし、美貌とそのグラマラスな肉体を武器に、娼婦でありながら王の愛妾にまでのし上がった苦労人デュ・バリー夫人にとって、その地位を踏みにじられる事はどうしても許せない。オーストリア皇女であり、まだあまりにも若く純粋なアントワネットにとっては、卑しいデュ・バリー夫人の存在すら許せない。だから本人たちとしては大事で、もちろん、どちらも自分から引き下がる気はない。

こういう場合、王にとってはたしてどうするのが一番なのだろうか。
公然と誰かを選んでしまえば、選ばなかった女性たちを敵にすることを覚悟しなくてはいけない。ましてや身内である女性たちからの恨みつらみなど受けたくない。選んだ理由が平等で正しいのなら、誰からも支持されるだろうが、この場合、そんな理由などどう考えてもないのである。まさに八方塞がりだ。

その点、ゼウスもルイ15世も“さすが”であった。
ゼウスは、「あいつに決めさせろ」と一言。無関係のトロイアの王子パリスにその決断を丸投げしてしまった。ルイ15世は、「おじいちゃんの愛人と仲良くしてね」とは言えないものだから、「同盟」を楯にしてやっぱりメルシー伯に仲介をさせる。

こうして自分の威厳は守りつつ、自分が恨まれることを見事に回避した王たちは、一見賢明であった。
ただ実のところ、トロイアの地は戦争になってしまったし、アントワネットとデュ・バリー夫人との遺恨は消えなかったのだから、二人の王の解決策はその場しのぎだったといえよう。(米倉敦子)

●参考文献
・「ギリシア神話」偕成社 エディス・ハミルトン著 山室静 田代彩子共訳
 初心者にも分かりやすく、内容も充実しています。英雄やトロイア戦争のエピソードも載っています。

・「ギリシアの神話  神々の時代 英雄の時代」中公文庫 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳
 神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

・「ホメーロスの諸神讃歌」筑摩書房 ホメーロス著 沓掛良彦訳

「ギリシア神話」岩波文庫 アポロドーロス著 高津春繁訳

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/03/09 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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