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2007年4月 6日 (金)

アニばら解体新書

自由を語る孤独な闘士?! ジャンヌ

「だって…、たとえ神だろうと私を裁くなんて許せない…!」
 首飾り事件の裁判中、法廷に立たされたジャンヌはこうつぶやきます。(第23話・ずる賢くてたくましく!
 ジャ、ジャンヌ!そんな大切なセリフをこんなところで言ってしまって大丈夫なんでしょうか?

 そもそも上記のセリフは筋が通っていません。詐欺師のジャンヌが裁かれるのは当たり前。盗っ人猛々しいとはこのことです。
 ところが、革命前夜のこの時期にあって、このセリフはきわめて象徴的な意味を背負ってしまいます。ジャンヌはここで「いかなる権力であろうと、私の尊厳を脅かすことはできない」と主張する、“自由の闘士”と解釈できてしまうからです。

 フランス革命の精神がこんなところに!物語はまだ中盤、加えて悪党なのにねえ、ジャンヌ。

 しかし、ジャンヌが自由を語る闘士になってしまったのもわからないでもありません。悪党、つまりはみ出し者がもっとも自由に近いという考え方は、いつの世にも存在するからです。逸脱者にして自由人。非道だけれど残忍になりきれないアンチヒーロー、ジャンヌ。
 その役割に見合うように、「アニばら」のジャンヌは大幅にエピソードを追加され、心の奥底に孤独を抱えた魅力的な大悪党として描かれています。
 
 それでは、「アニばら」の首飾り事件を見ていきましょう。まず「第21話・黒ばらは夜開く」の一場面。
遠乗りに出かけようとするオスカル。そこへ樽いっぱいの金貨を賄賂として用意したジャンヌが現れます。もちろんオスカルはそれをはねのけ、ジャンヌは転んで地面に倒れます。
 ジャンヌは去ってゆくオスカルに向かって、
「お上品な人。あなたみたいな人はよくいるけど、あたしが一番魅力を感じない種類の人だわ」
 と言い放ちます。

 オスカルが賄賂を拒否できるのは、高潔だからというのはもちろんですが、彼女がお金に困っていない、つまり身分という盾が守ってくれているからでもあります。恵まれた立場にいるからこその高潔さに、なんら魅力を感じないというこのセリフは、ジャンヌの、貴族階級への宣戦布告とも受け取れます。

 そして、上述のエピソードを踏まえて見る首飾り事件は、もはや金の亡者が引き起こしたスキャンダルではなくなってしまいます。あの事件は、ジャンヌのルサンチマン(強者への怨恨)が引き起こした貴族社会への復讐譚へと変化するのです。
 
 この解釈の変化により、ジャンヌ自身も孤独な闘士に変化します。金という権力を使い、権威に復讐することに執念を燃やす一方、権力の持つ虚しさをも理解しているアニばらのジャンヌ。首飾り事件によって、アントワネットの権威を失墜させておきながら、その表情には達成感はない。共犯者のニコラスも、誰一人としてジャンヌの空虚を理解することはできません。唯一ロザリーがジャンヌの空虚を読み取っていますが、そのことがジャンヌの助けになるわけではありません。

 しかし、それでいいのです。だって、ヒーローというのは本来孤独なものなのですから。

 さてそんなジャンヌのヒーローらしさを象徴するもうひとつの物語が、ニコル・ド・オリバとのエピソード。アントワネットの替え玉として登場するオリバは、アニメでは盲目の女性になっています。うすぎたないパリの裏通りの小屋で、「一晩たったの10スウ。先払いが決まりです…」 と呪文のように繰り返す、えらく哀れを誘う描かれ方をされています。

 首飾り事件の実行後、証拠隠滅のためにジャンヌはオリバを殺しに行きます。しかし、目の見えないオリバはジャンヌと気付かず、「一晩たったの10スウ…」と繰り返す。結局、ジャンヌはどうしても彼女を手にかけることができずに、ナイフをおろしてしまいます。
 貴族に対してはいくらでも残酷になれるのに、自分より弱い女を殺すことがどうしても出来ない。その存在がいつか自分を脅かすことになっても。

 それでこそアンチヒーロー!

 ちなみにこの間(21話~24話)、オスカルの出番はほとんどありません。「いいのか、主役置いてけぼりで」と私が言ったら弟が

 「ん? というか、このへんは完璧ジャンヌ主役じゃん。だって、首飾り事件を境にベルナール、ロベスピエール、サンジェストが、そして民衆が動き出す。物語を動かすのが主役だとすると、もうここでの主役はジャンヌなんだよ。オスカルだって、“おそろしくたくましい…”ってジャンヌに敗北宣言しているし」

 さらに続けて、
 「きっと、ベルばらじゃなかったらジャンヌが革命のシンボルになって、残された人は“そんな女がいた…。自由を求める女が”とか言って、ことあるごとにジャンヌを思い出したに違いないよ!」

 ありうる…。作品の根幹はつかんでいるけど、キャラクターや物語は大幅に変容している出崎版アニばら。その衝撃はまだまだ続くのでした。(池田智恵)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/04/06 11:00:00 アニばら解体新書 | | トラックバック (0)

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