2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« 「ベルばら」みたいなまつげになれる!?マスカラ | トップページ | 口八丁手八丁の悪党列伝 »

2007年4月12日 (木)

天の涯から―東欧ベルばら漫談

貧しさと尊さと~ジャンヌの転落~

 私の住んでいる地域は、ウクライナとスロヴァキアの国境に隣接しているのですが、ドイツやチェコに隣接する西側が何かと潤っているのに対し、東側、特に南部はポーランドの中でも最も貧しい地域として知られています。

 それでも、お隣ウクライナから見ればまだ豊かな方で、毎年、かなりの数のウクライナ人がこの地域に移り住んできます。それも家族単位ではなく、稼ぎ頭の父親だけ、あるいは若い人だけがやって来て、家族に仕送りをするケースが多いそうです。
 が、中にはビザが取得できず、不法就労者のまま居着いてしまう人もいます。そうなると、もう二度と国境を超えることは出来ません。家族とも離ればなれになりますが、それでも皆が生き延びるために、ここで稼ぎ続けるのです。

 夫の会社関係の知り合いに、ウクライナから来た若い男性がいるのですが、この方もやはり不法就労者としてポーランドに居着いてしまった一人です。
 故郷には妻とまだ幼い子供がいるのですが、子供は難病で、治療費を捻出するためポーランドに出稼ぎに来たということでした。
 しかし、不法就労者である為、もう二度と故郷に帰ることはできません。家族とももう何年も会ってないらしく、仕送りだけ続けているのだそうです。

「じゃあ、家族はどうなるの。このまま離ればなれでも構わないの?」 
と私が夫に問うと、「さあ、どうするんだろうな」。
 そのあまりにドライな返答に、
「知り合いのくせに、相談に乗ったりしないの? ずいぶん薄情なのね」
と眉をひそめると、
「知って、どうするの? 彼の家族の為に何かしてあげられるの? 聞くだけ聞いて、『あら気の毒ね、可哀相ね』で終わるぐらいなら、知らない振りをする方が親切というものだろう。それより、いい仕事があったら率先して回してあげる方が、よほど彼も喜ぶ。何の役にも立たない身の上相談なんか、心を傷つけるだけだ

 そんな訳で、家にお招きした時も家族の話はせずに、お酒のことや、ウクライナ語とポーランド語の違いなど、当たり障りのない話題に終始したのですが、まるで『オルフェウスの窓・ロシア編』から抜け出したような、ハンサムで真面目な男性なのに、不法就労がばれたら逮捕され、家族もろとも路頭に迷うしかないのか――と思うと、「同情や優しさなんて何の力にもならない」と哀しい気持ちになったのでした。

 ベルばらでは、他人の家からジャガイモを盗んだジャンヌが、お母さんに平手打ちされた時、 「なにさ、きれいごとばっかしいってたら、飢え死にするのがオチさ!」 と啖呵を切ります。私はその気持ちを頭から否定はしません。私だって、極限の貧しさの中で善人でいられる自信はないからです。
 真っ当な意見を申せば、ロザリーのように、貧しくとも清く正しく生きていくのが理想なのかもしれません。が、一方で、 「こんなブタ小屋みたいなところで終わってたまるもんか」 というジャンヌの野心も、一つの生きる原動力には違いないと思うのです。

 ただ、彼女の人生には「足ること」と「分かち合うこと」が存在しませんでした。ブーレンビリエ侯爵夫人の元で得た豊かさを、ロザリーやお母さんと分け合っていたら、もっと違った人生が開けていたでしょうに。助けを求めに来たロザリーを、恋人ニコラスに鞭打たせ、他人のように冷たく追い払った時から、彼女の人生は破滅の一途を辿っていきました。

 不法就労するウクライナの男性も、法の目から見れば、懲役に値する犯罪者なのかもしれません。でも、生きるため、また家族を養うため、盗みもせず、殺しもせず、幾らにもならない仕事を黙々とこなす姿を見ていると、人間の侵しがたい尊さを感じずにはいられないのです。(優月まり)

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/04/12 11:00:00 天の涯から―東欧ベルばら漫談 | | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/14621526

この記事へのトラックバック一覧です: 貧しさと尊さと~ジャンヌの転落~: