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2007年4月27日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

悲劇が教えた真の夫婦愛 ハルモニアとアントワネット

「おじい様のお望みならば…」
うら若き女神ハルモニアは、戸惑いながらも神の王ゼウスの言葉に従った。
ハルモニアの両親は、奔放な愛と美の女神アフロディテ、そしてゼウスの出来のよくない息子で暴れん坊な軍神アレスである。お騒がせ不倫カップルの、愛の果実なのだが、幸い両親どちらの性格も受け継がなかった。その美貌こそ母親そっくりであるが、ハルモニアは調和を司る、清純にして従順な乙女なのである。だから、高貴なる神々の姫君でありながら、たかが人間との結婚を承諾したのである。

花婿の名は、カドモスという。
実は孫娘を人間に嫁がせるのには、ゼウスにもそれなりの事情があり、ひとつは堂々と言える内容だが、もうひとつはあまり公にしたくはない内容であった。
第一にゼウスはカドモスの、竜を打ち倒し、テバイの丘に国を建国した英雄としての偉業を高く評価していた。第二に、カドモスは怪しげな雄牛に連れさらわれた姉妹のエウロペを探して旅をしていたが、父親からは彼女を連れ戻すまでは帰ってくるなと厳命されていた。そしてカドモスはもはや故国には戻れないのである。何故なら、雄牛はゼウス自身なのだから。

そんなわけで、ハルモニアの結婚は、本人の意思そっちのけで、少々手前勝手な“お家の事情”により決められた。遥かオリュンポスから地上へと嫁がされたハルモニアの心境たるや、異国からの花嫁アントワネッの味わった困惑以上だったのではないか。

しかしアントワネットと違い、ハルモニアの結婚は、女としては幸せであった。カドモスは人間といっても、神々の子孫でもあるし、英雄だけあって精悍で魅力的な若者であり、彼女を深く愛した。ハルモニアもカドモスを心から愛するようになり、仲睦まじいふたりは、セメレアガウエアウトノエイノポリュドロスの5人の子に恵まれた。しかし、この善良で幸福なふたりの子は、なぜか次々と悲劇に見舞われた。
セメレは女神ヘラの策略により雷光に打たれて非業の死を遂げ、アガウエは狂乱の果てに我が子を手にかけ、アウトノエは女神の罰により息子を殺され、イノは海へ飛び込んでしまった。

度重なる悲劇にうちひしがれ老いた国王カドモスは、自ら建国した国を立ち去ることを決意した。愛娘セメレの体を焼いた雷光が、彼らの館まで灰にした今、それでも運命と対峙する力など、老王カドモスには残されてはいなかった。王としてこの国を守り抜くことができないのなら、立ち去るしかない。それが最後の務めだ。
女神ゆえ老いることがなく、未だに美しい妻ハルモニアは、その時、かよわい腕で夫のかつてたくましかった体を支えた。今は力ないこの体こそが、彼女をなによりも優しく包んだことを、女神は忘れなかった。
妻の腕によりかかりながら、カドモスの皺の刻まれた顔に涙がつたった。夫婦はこのとき、なによりの幸福を知ったのだ。

ルイ16世は、処刑の日の前日に家族との面会を許された。父として復讐しないようにと子供を諭し、妻と最後の抱擁を交わした。アントワネットは、このとき、彼の深い愛情と誠実な優しさを思いおこす。そして、ここに愛があったのだと自覚したのだった。

悲劇こそが、時には愛を教えてくれるようである。(米倉敦子)

《参考文献》
「ギリシアの神話  神々の時代 英雄の時代」中公文庫 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳  神々のエピソード満載。彼らの誕生から、とんでもない冒険談まで。

「ギリシア神話」岩波文庫 アポロドーロス著 高津春繁訳

・「変身物語」岩波文庫 オウィディウス著 中村善也訳

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/04/27 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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