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2007年5月15日 (火)

世界史レッスン

観光名所だった精神病院 1735年

  ~アントワネット生誕20年前~

 イギリス人は絵も音楽もへた、と陰口をきかれるなか、「イギリス最初の大画家」と呼ばれたのが、ウィリアム・ホガースだ。彼の人気作品に、8枚連作『放蕩児一代記』(1735年)がある。

 これはどこまでも堕(お)ちてゆくダメ男の絵物語で、順に――大学生トムが父の死で田舎へ帰る⇒周りにゴマ磨りばかり集める⇒放蕩三昧(ほうとうざんまい)で破産⇒借金を返せず逮捕される⇒金目当てで老女と結婚、恋人を捨てる⇒賭博で全財産を失う⇒監獄へ入る⇒最後はベトラム(=ベスレヘム精神病院)でさらし者に・・・

 この8枚目の絵が悲惨なのだが、トムは頭を丸坊主にされ、半裸で足には鉄鎖をつけられている。胸の傷は自殺をはかったためらしい。周囲には、自分を法王やら音楽家やらイエス・キリストと信じ込む妄想家たちが、おおぜいひしめいている。

 そして部屋の片隅には、美しく着飾った若い女性がふたり。彼女たちも患者なのだろうか? 違う。明らかに正気だし、しかもトムの様子をおもしろそうに眺めて、ひそひそ話をしている。これは見物客なのだ!

 ロンドン郊外にあるベトラムは、13世紀半ばに建設された古い建物で、幾度か再建・拡張され、当時は150名内外が収容されていた。経営は順調、いや、それどころか、大儲けだった。なぜならここは何百年にもわたりロンドン子たちの「娯楽施設」で、入場料を取って(子連れもオーケー)自由に見学させていたからだ。

 ホガースの絵に描かれた淑女たちも、こうしてお金を払い、動物園の珍獣を見るように、収容者たちの姿を見て楽しんでいたのだ。

 この状況はイギリスばかりではない。フランス、ドイツ、スペイン(ゴヤも『サラゴーサ精神病院』を描いている)、どこも似たりよったりだった。客の中にはわざと病人をからかって、その反応がおかしいと笑いころげる者もいたという。

 さらに暗澹(あんたん)とするのは、ベトラム勤務のモンローという医師が発表した治療法である。それによれば、患者には毎年春先に瀉血(しゃけつ)し、その後は週に一度、吐剤を飲ませ、なおかつ下剤をかけるそうだ。「これは父から伝授された処方で、これ以上に良い治療法はない」。

 それで治ったわけ? (中野京子)

☆関連記事「ゴヤの『サラゴーサ精神病院』」(中野京子の花つむひとの部屋)はこちらです⇒ http://blog.goo.ne.jp/hanatumi2006/

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投稿者 中野京子 2007/05/15 8:56:02 世界史レッスン | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第63回目の今日は、「観光名所だった精神病院」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/post_7b89.html#more  17,18世紀ヨーロッパでは、精神病院が一種の観光施設として見物料を取って公開していたエピソードを書きました。  ゴヤにも『サラゴーサ精神病院』という作品があるが、ホガースのイギリス的な皮肉な目とは違い、いかにも彼らしい一種異様な凄まじいエネルギー... 続きを読む

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