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2007年5月18日 (金)

アニばら解体新書

革命の預言者、吟遊詩人

 これまであえてとりあげてきませんでしたが、アニメには「吟遊詩人」という役名のオリジナルキャラクターが登場します。片目片足の不自由な体でアコーディオンを抱え、貧しいパリの下町の生活をうたいあげる彼は、革命の進行をわかりやすく説明してくれる重要なキャラクターです。
 ちなみに劇中で彼が歌うのはこんな詩。

「ベルサイユの事なんか知らないねぇ オーストリアから来た王女だって? スウェーデン貴族との火遊びごっこだって? 知らないねぇ俺たちは それより欲しいぜたった一杯の酒 たったの一杯…」 第20話「フェルゼン名残りの輪舞」

貴族の時代はもうすぐ終わりよ 王室がおれたちフランスの全てだとも、もう思わない 昨日、グラヴィリエ街で子供が死んだ パンが買えずに子供が死んだ おとといタンプルでは女が死んだ 子供に乳をやろうとして働きすぎて女が死んだ 死ね! 太ったブタはみんな死ね!」 第25話「かた恋のメヌエット」

「何でセーヌは濁っちまったんだろう 花のパリは、どこへ行っちまったんだ ひとっかけらのパンの為にだれもが目の色を変える 花を歌い、恋を語ったあのセーヌはどこへ流れていくんだ」 第33話「たそがれに弔鐘は鳴る」

 革命の激化がわかりやすく解説されていますね。
時代を語りはじめるのは吟遊詩人だけではありません。ナレーターも30話を過ぎた頃から、とつとつと核心にせまるようなことを語りはじめます。

愛する者、美しい者、生きねばならぬ者がある日突然、帰らぬ人となる ひょっとして新しい時代とはそんな悲しい時代ではないのだろうかと… 第32話「嵐のプレリュード」

彼(ルイ・ジェゼフ王子)にとってこれから王室が迎えねばならない苦難を知らずに死んだことは、せめてもの救いであった 第33話「たそがれに弔鐘は鳴る」

 話が飛びますが、皆さん司馬遼太郎の小説を読んだことはおありでしょうか? 既読の方は、彼の小説の中には突然取材先での思い出や、登場人物に対する作者の見解が挿入されることをご存じかと思います。魅力的な登場人物のありようを描写することで、読者を物語の世界に引き込みつつ、そこへ現代的な視点や作者の意見を投げ込む。こうすることで、読み手はその時代に生きる人間たちが織りなす物語の魅力と、過去の事実として歴史を分析する客観的な視点の双方を手に入れることができます。この演出が、奥行きのある歴史物を作り出す鍵となっているのです。

 司馬氏のこういった演出はマンガにも採用されていて、みなもと太郎「風雲児たち」清原なつの「千利休」など、数々の傑作歴史マンガを生み出しています。原作「ベルばら」に時々登場する、ルソーネッケルらを解説した文も、この演出の範疇でしょう。

 しかし、小説やマンガでは非常に効果的に機能するこの演出、アニメや映画ではまず使われることがありません。例がほとんどないので比較しづらいのですが、おそらくアニメ・映画では物語の最中に突如、創り手側の現代的な視点を投げ込むと、視聴者がこれまで没入していた作品からはじき出されてしまったように感じるからでしょう。

 小説・マンガは、「読む速度を選べる」「音楽、音声が無いため想像の余地が大きい」など、読者が主導権を持つ部分が比較的大きいため、主観的視線と客観的視線の間を違和感なく行き来できるのではないでしょうか。アニメ・映画では、一度引き離されてしまった視聴者の心を、もう一度作品に没入させるのは難しいですから。

 それでは話をアニばらに戻します。上記の引用の下線部を読んで頂くとわかるかと思いますが、吟遊詩人のおじさんとナレーターは、実は“未来を語ることができる存在”なんですね。つまり、物語の中で起こる事件がこの先歴史にどう作用するかを視聴者に伝え、分析させることができる。不自然を感じさせず、客観的な視線を視聴者に共有させることができるわけです。彼等の語りが、アニばらを奥行きの感じられる歴史物にしていることは間違いないですね。

 もうひとつ注目しておきたいのは、ここで語られている革命の予兆が、常に暗い影をまとっていることです。原作にある、自由に向かって走ってゆくような爽快な緊張感はみじんもありません。原作とは違った観点から革命を描こうとするアニメの方向性が、如実に表れている部分といえるのではないでしょうか。(池田智恵)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/05/18 11:00:00 アニばら解体新書 | | トラックバック (0)

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