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2007年6月15日 (金)

アニばら解体新書

革命を描くということ

「ロベスピエールの本当の狙いは権力さ。民衆を押したててそのトップの座に座る。なにが革命だ。民衆のためだ!」

 これは誰が誰に対して、どのような状況で発したセリフでしょうか? 
 空欄を埋めてみましょう。
 (  ①  )が、(  ②  )に、(  ③  )時期に発した。

正解は、①サンジェスト、②ベルナール、③バスティーユ直前でした。

 原作では正義感あふれる若き弁護士としてさわやかに描かれているロベスピエールですが、アニメでは見た目40歳くらいの老獪そうなおっさんに変形しています。そしてロベスピエールに心酔しているはずのサンジュストは、貴族の暗殺にいそしむテロリストに。

 「清廉潔白な理想家でない」ロベスピエール、そのように彼を評した過激な暴力主義者サンジェスト、そしてそんな二人の中間にいるベルナール。この3人を介して、出崎監督の革命観が語られる第36話「合い言葉は“サヨナラ”」は、個人的にもっとも印象深い回です。

 原作では家に居候し、されるくらい親しい間柄のサンジュストとベルナールですが、アニメでは、過激派サンジュストに対して、ロベスピエールもベルナールも距離を置いています。
ロベスピエールの命を受けたベルナールはサンジュストを監視します。尾行に気づいたサンジュストはベルナールに、
「民衆のデモ? ネッケルの演説? そんなものよりもっと効果がありますよ。ナイフと剣には」 とぶっそうなことを言い放つのです。

 ロベスピエールの支持者であるベルナールは、サンジュストの言葉を否定しますが、ニヒリストのサンジュストは、
「信じられる人間なんているもんか!」
と言い、
「先生(ロベスピエール)はね、話し合いだの議会だの言っているけど、ほんとうはチャンスを狙っているのさ。正当な理屈をつけて、今の特権階級を皆殺しにするためのね。本当の狙いは権力さ。民衆を押したててそのトップの座に座る。そういう意味で言えば先生はぼくなんか比べものにならないくらいのスケールを持った“テロリスト”さ」
という言葉を残して去ってゆきます。テロリズムの語源が、後のロベスピエールの恐怖政治であることを考えると、なかなか予言的な発言です。

 この会話の後、ネッケルの罷免という、バスティーユ襲撃につながる歴史的事件が勃発。ここで、アニメのロベスピエールは「ネッケルが虐殺された」という偽の噂を流し、武力蜂起をうながします(ロベスピエールが流言飛語を流したというのは史実にはありません)。サンジュストの言うとおり、民衆を利用しようとたくらむアニメのロベスピエール。

意気揚々と演説するロベスピエールを見つめながら、
「たとえロベスピエールがどんな男でも、そんなことは問題じゃない。要は民衆が自分たちのために立ち上がれるかどうかなんだ」 と言うベルナール。

革命は、“戦争であり、暴力を伴うものである”ということと、“しかし、それは自由を望む民衆の意志が選んだものである”ということ。このふたつが過不足なく描いてある! 

フィクションには正義の味方が存在しますが、歴史の中には絶対的な正義は存在しません。同じように歴史の中で行われる選択に、絶対的に正しい選択というものもありえません。歴史を計るのに、「正義」という尺度はふさわしくないのです。
しかし、正しさを計るのではなくそこにどのような意志があったのかを見極めようとすることはできます。アニメでは、フランス革命は、暴力の繰り返しであり、多くの悲劇の上に成り立ったものであるけれど、同時にそれが虐げられた民衆たちの意志から生まれたものであるということをしっかり描き込んでいます。

 原作では、「オスカル死後は10週で終わらせてほしい」との編集部の要請により、描かれることなく終わったその後のフランス革命。
アニメの第36話に描かれた三者三様は、描かれることのなかったその後と、歴史の複雑さをかいま見せる出色の出来です。(池田智恵

(01年9.11後の現在と、「アニばら」が初放映された79年当時では“テロ”に対する人々の心証は大幅に変化しています。作中でのテロリストは暴力主義者というくらいの意味でとらえた方がよいかもしれません)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/06/15 11:00:00 アニばら解体新書 | | トラックバック (0)

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