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2007年6月22日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

恋に破れた、か弱き花 オイノーネーとディアンヌ

 休暇が明けて5日たつのに戻らないアランを探して、彼の家にやってきたオスカルが見たもの。それは見るも無残な腐臭を放つ白骨化した遺体。衛兵隊員たちのアイドル、あの愛らしかったディアンヌの変わり果てた姿であった。

アランの最愛の妹で、オスカルに「ロザリーに似ている」 といわれたディアンヌだが、登場回数は少なく、婚約者に裏切られてあっけなく自ら命を絶ってしまう。初々しく顔を赤らめて「幸せになれるとおもいます」 と語り、ジェローデルに求婚されているオスカルを少なからず動揺させたことを思うと、本当に哀れだ。

薄幸のディアンヌのように、裏切られる恋に泣く物語も世の中には数多い。

オイノーネーは、ケブレーン河の神の娘であった。彼女の夫は、パリスという羊飼で、少々軽薄な性格であった。しかし、彼は身分のわりに不思議と犯しがたい気品がある美しい若者で、彼女はそんな夫を熱愛していた。

ある日、突然まばゆいばかりに麗しい3人の女性がパリスの前に現われた。彼女らはオリュンポスにおいて輝ける地位を占める大女神、ヘラ、アテネ、アフロディテであった。女神たちはパリスに、それぞれ彼の気をひきそうな贈り物をちらつかせながら、自分たちの中で誰が一番美しいか決めろと迫ってきた。
パリスが選んだのはアフロディテであった。なぜなら彼女の贈り物である「世界一の美女」、すなわちメネラオスの妃ヘレネ、すでに会ってもいない人妻に夢中になってしまったからだ。ヘラの権力もアテネの武勲も、パリスにとっては、なんの魅力も感じないものであった。

ヘレネを求めて旅立つという夫を、オイノーネーは当然止めた。それはなにも自分を捨てないで欲しいというだけではない。予言の才があった彼女は、ヘレネを求めれば夫の命が失われることを分かっていたのだ。しかし、涙ながらにすがるオイノーネーのことなど、不実なパリスはもはや眼中になかった。
オイノーネーは、旅立つ夫に最後に言った。
「あなたが手傷を負いましたら、どうぞ私のところにいらしてください。あなたの傷を癒せるのは、この私だけなのですから」

王妃ヘレネをパリスが奪ったことにより、ギリシャとトロイアは戦になった。実はトロイアの王子であったパリスも参戦し、弓で射られた。彼はかつて捨てた妻、オイノーネーの元へと運ばれた。しかし、あれほど愛した夫が虫の息で自分に助けを求めるのをみつめるオイノーネーの瞳は、凍てついていた。
彼女は治療を拒み、その場から立ち去った。自分の深い愛を無情にも裏切った夫に、オイノーネーはこうして復讐を果たそうとしたのだ。

だが、彼女の深い愛はそんなことで消し去ることはできなかった。
夫を死なせることなんてやはりできない!オイノーネーは、薬をもってパリスの元へ急ぎ戻った。しかし、彼女が見たものは、すでに息絶えたパリスであった。

悲嘆にくれるオイノーネーに残された道は、自ら命を絶つことだけであった。

オスカルがディアンヌに「あなたはロザリーに似ている」 と話したとき、ロザリーについてこうも言った。
「ふまれても、ふまれても、ひたすらに生きて」

しかし、踏まれては生きてはいけない、そんなか弱すぎる花もあるのだ。(米倉敦子)

《参考文献》
「ギリシア神話」岩波文庫 アポロドーロス著 高津春繁訳 
「ギリシアの神話 英雄の時代」カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫 

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/06/22 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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