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2007年7月 6日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

恐るべき煌めき―首飾りの呪い

 宝石商のベメールマリー・アントワネットに買ってもらおうとしたダイヤモンドの首飾りは、160万リーブル(約192億円)で、大砲60門積んだ軍艦が2隻分買える値段だったという。だからアントワネットは賢明にも、「もうたくさんダイヤはもっているし…」 と購入を断った。

アントニア・フレイザーの伝記小説『マリー・アントワネット』には、実際の首飾りの絵がのっている。それを見れば『ベルばら』に描かれた首飾りの絵が実物と全く同じであることが確認できる。なるほど、本当に派手なシャンデリア(全てがガラスではなく、ダイヤモンドの!)をそのまま首飾りにしたような、少々くどいくらいのゴージャスさである。
 
 アントワネットの美しい胸元を飾ることなどなかったこの首飾りだが、後に彼女を破滅へと導くことになった。「首飾り事件」は、アントワネットの評判と権威を公然とおとしめることになったのだ。
アントワネットにとってまさにそれは、“呪いの首飾り”なのである。

 だが、もっと怖ろしい、何代にも渡って子々孫々に不幸をもたらした、究極の“呪いの首飾り”がギリシャ神話には存在する。
 それはテーバイ建国の王カドモスの結婚式で、花嫁である女神ハルモニアに贈られたお祝いの首飾りである。

 この首飾りの出所は諸説あるが、有名なものは工芸の神ヘパイストスとする説である。この説はいかにも“呪い”にふさわしいといえる。なぜなら、ハルモニアはヘパイストスの妻であるアフロディテと、軍神アレスとの不倫によってできた娘なのだから。義理の娘に罪は無いが、ヘパイストスにも神としての、男性としての誇りがあったはずだ。

 出所はともかく、このいわく付きの一品は、魅惑的なほど美しく、その呪い効果たるやすさまじかった。
 首飾りを受けついだ子孫たちを襲う非業の死や、悲惨な殺人事件、はては親殺しに、近親相姦。有名な悲劇の名作、父親を殺し、母親と子を成した『オイディプス王』はカドモスの子孫なのである。

 しかし、よくよく考えてみれば、これらの事件の原因が首飾りだとははっきりいえないではないか。たまたま運の悪い(?)家系だということで、首飾り自体は無実かもしれない。

 しかしついに、はっきりと首飾りがその役割を演じる事件が勃発する。自らの罪に絶望してテーバイを去ったオイディプスの息子たち、カドモスから数えて6代目のエテオクレースポリュネイケースの時代のことだ。

父王が去ったあと、息子たちは変わりばんこに1年おきにテーバイを治めることになった。しかし、やはりふたりの王が並び立つのは無理があった。エテオクレースが王権を手放さず、ポリュネイケースを追放してしまったのだ。
ポリュネイケースはその際、くだんの首飾りを持ち逃げする。アルゴスに流れ着いたポリュネイケースは、かの地の王アドラストスの婿になった。王はポリュネイケースのテーバイ奪還を約束し、主だった将を集めようとした。
しかし、アムピアラーオスという将が、参戦に応じないばかりか、他の将の参戦までも阻止しようとした。

アムピアラーオスは、実は予言者であり、あらかじめテーバイ攻めの結果を知っていたのだ。すなわちテーバイを攻めれば、王アドラストスを除いて、みんな戦死するということを。

だがそこで、ポリュネイケースは、将を射んとする者はまず馬をとばかりに、例の首飾りを取り出す。
アムピアラーオスの妻は、この贈り物の誘惑に勝てなかった。そして、彼女は夫を戦地へと導いてしまう。

かくて予言は実現し、アルゴスの武将ばかりではなく、ポリュネイケースも兄のテーバイ王エテオクレースとの一騎打ちで、相打ちとなって結局命を落とす。
首飾りは、大勢の生き血を得て、ますます怪しげに煌いたことだろう。

ところで…
実は、アントニア・フレイザーの『マリー・アントワネット』には、「こりすぎた派手な装飾品は、マリー・アントワネットの好みではなかった」 とある。

だとすると、実は単に気に入らなかったというのが、アントワネットが購入しなかった理由ということだろうか…
192億円もの価値がある首飾りを「こんなの趣味じゃないわ!」 とつっぱねた?

これぞハプスブルグの姫にして、ベルサイユのファッションリーダーの心意気というべきか。(米倉敦子)

《参考文献》
『ギリシア神話』アポロドーロス著 高津春繁訳 岩波書店
「ギリシアの神話 英雄の時代」カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫 
『マリー・アントワネット』アントニア・フレイザー著 野中邦子訳 早川書房

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/07/06 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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