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2007年7月10日 (火)

世界史レッスン

女優アドリエンヌの謎の死 1730年

  ~アントワネット生誕25年前~

 コメディ・フランセーズの看板女優アドリエンヌ・ルクヴルールが、1730年初春、舞台で突然倒れ、2週間後そのまま息を引き取った。まだ37歳。死因は不明。世間は恋仇(こいがたき)ブイヨン公爵夫人に毒殺されたと噂した。

 確かに彼女たちが恋愛問題の渦中(かちゅう)にあったのは事実で、相手はザクセン伯モーリッツ。例のアウグスト強健侯(「生ませた子どもは360人」参照)の庶子のひとりである。

 アドリエンヌの死の床にはモーリッツの他に、彼女のファンだったヴォルテール(!)も駆けつけたと言われる。数年後には件(くだん)の公爵夫人も病死し、真相は闇の中にまぎれてしまった。

 ところがそれから2世紀近くもたち、華麗なる三角関係は人気オペラとして蘇える。1902年、イタリア人作曲家チレアが、『アドリアーナ・ルクヴルール』を初演したのである。

 実際のモーリッツは父王に似て遊び人だったはずだが、オペラでは一途にアドリアーナを恋する純情な青年マウリッツィオへと変わり、ブイヨン夫人は彼らの恋を邪魔する悪役として、実名で登場させられている。

 夫人は恋人の心変わりを怨んで、というより、女としてアドリアーナに負けた悔しさから、毒を仕込んだスミレの花束を彼女に送りつけるのだ。男が女を殺すオペラは山ほどあるが、女が女を殺す作品はまことに珍しい。

 山場は、互いに身分を知られたくないふたりの女性が、暗闇の中で顔をヴェールで隠しての対決シーン--

 「彼を愛しているのね」

 「ええ、全身全霊で!わたしの心を初めてひらいてくれたお方ですから」

 「あいにくあの方の愛はわたしのもの」

 「いいえ、わたしたちは深い絆で結ばれています」

 「おまえは何もの?わたしの力を知らないの!」(そこへ人の足音があり、逃げる)

 「待ちなさい、この卑怯者!」(叫びながら部屋中の明かりを点けてまわる) 

 片や大女優、片や権力者の妻。どちらも怖いものなしの美貌で、誇り高く負けず嫌い。オーケストラまでがヒステリックに鳴り響いて、いやあ、凄い迫力です。ピカソをめぐる、愛人ふたりの取っ組み合いの喧嘩を思い出してしまう。(中野京子)

 

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投稿者 中野京子 2007/07/10 8:51:28 世界史レッスン | | トラックバック (2)

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