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2007年8月 3日 (金)

アニばら解体新書

アンドレ、もうひとつの死

 「そうだ…そんなはずはない。すべてはこれから始まるんだから…俺とおまえの愛も…新しい時代の夜明けも。すべてがこれからなんだ…。こんな時に…俺が死ねるはずがない。死んで…たまる…か…」 (第39話「あの微笑みはもう還らない!」)
 1789年7月13日、アンドレは銃弾により命を落とします。その死が与える印象は原作とアニメでは大きく異なっています。

 戦闘が終了した7月13日夕刻、広場に横たえられるアンドレ。彼の手を握るオスカル。そしてそれを見守る市民たち。手の施しようのない状態のアンドレの手を握りながら、オスカルは必死で語りかけます。
 「いつかアラスへ行った時、二人で日の出を見た…。あの日の出をもう一度見よう、アンドレ。あのすばらしかった朝日を…二人で…二人で生まれてきて、出会って……そして生きて…。本当に良かったと思いながら…」

 しかし、その瞬間にアンドレは一筋の涙を流し、目を開けたまま息絶えてしまう。瞳を閉じることなく死んでゆくという演出が、革命の行く末を見ることも出来ずに死んでしまった彼の無念さを表しています。死んでしまったアンドレに対し、「わたしを置いていくのか」 と慟哭するオスカル。オスカルの声をあてた田島令子さんの熱演が光ります。
 原作のアンドレからは、愛する人を守って死んでいける満足感を感じ取ることができますが、アニメではむしろ愛する人を置いていかねばならない無念さが心に残ります。アンドレも、アニメで大幅に変化したキャラクターですが、その結果がこの死の場面に集約されています。

 思えば原作のアンドレは、不思議なキャラクターです。両親とは死別しており、衛兵隊に入る前にはオスカル以外の友人がいた様子もなく、オスカルの補佐というものの仕事内容がはっきりしない。アランともほとんどオスカルの話しかしないし、オスカルのいない場所でのアンドレがどういう人間なのかを想像させるエピソードはほとんど用意されていません。

 また、主人公の恋人が無理心中を図るというのもあまり例がありません。ましてやそれが人気キャラクターになるなんてことはそうそうないでしょう。毒入りワインを用意するアンドレの行動は、冷静に考えると「こんなのに惚れられちゃってオスカルも運が悪い」と思わせるのに十分ですが、実際にはそうならず、むしろ読者はアンドレの思いを応援してしまいます。

 そもそも原作のアンドレとオスカルの結びつきを描いた最初のエピソードは、王妃を落馬させた責任を問われるアンドレを、オスカルが命を賭して助けるというものでした。ここで、アンドレはいつかオスカルのために命を賭けることを誓っています。つまり早い段階で「いつかオスカルのために死ぬこと」が彼の役割であることが示唆されているんですね。同様に、無理心中未遂もアンドレがオスカルのために死ねる人間であることの強調のエピソードであると考えると、あの話が不思議なほど読者に嫌悪感をもたらさない理由も腑に落ちるのではないでしょうか。オスカルを殺そうとするというエゴより、命を投げ出せるほど彼女を愛しているということの方が重要なんですね。(ちなみにこのエピソードはアニメで全面カットされました。)

 さて、アニメのアンドレは原作と比べると、はるかにオスカル以外の人間との交流が多い。一人で政治集会に通っていたり、ベルナールの演説を聞きに出かけて、彼から「君も俺たちと一緒にやらないか」 と誘われたり。また、オスカルが「アンドレは黒い騎士ではないか」 と疑うエピソードが用意されていたりと、原作にあるオスカルとアンドレの一体感のようなものはかなり希薄になっています。

 一方で、アンドレの目が見えなくなっていることを知り、彼を気づかうオスカルや、革命に心を傾けながらオスカルの側にいることを選ぶアンドレの秘めた決意がかいま見えたりしていて、アニメはアニメで味わい深い恋愛模様を描いていますが!
 原作のアンドレがオスカルのために死ぬことで物語の中での役割を終えるキャラクターだとすると、アニメのアンドレは、志半ばにして死んでいった市民の一人として、その役割を終えていったように感じられます。原作、アニメともに革命半ばにして倒れてゆく恋人たちの悲劇であることに変わりはないのに、キャラクターの作り方によってその死が与える印象は全く違う。双方を見比べてみて、その印象の違いを味わってみるのも面白いと思いますよ。(池田智恵)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/08/03 11:00:00 アニばら解体新書 | | トラックバック (0)

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