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2007年8月 9日 (木)

天の涯から―東欧ベルばら漫談

無名戦士の墓~名もなき祖国の英雄たち~

 欧州諸国を旅行していると、無名戦士の墓や戦争記念碑を随所に目にします。
 ポーランドでは首都ワルシャワの中心に位置するサスキ公園に、国を代表する無名戦士の墓があり、2メートル四方ほどの慰霊碑にはいつも多くの花が手向けられ、その両サイドをポーランド軍の兵士が見守るように立っています。また、慰霊碑を囲むアーチ型の壁には、これまでにポーランドが経験した戦争の記録が刻まれ、絶えず他国からの支配や侵略に脅かされてきた、哀しい歴史をしのばせます。

 こうした無名戦士の墓、特に第二次大戦にまつわる慰霊碑は、首都のみならずポーランド各地、森の奥にちょっと開けたような小さな村にも見ることがあります。わけても印象的なのが、各地の公共墓地に併設されている無名戦士の墓です。
 その地で亡くなった兵士の亡骸(なきがら)を、国や人種の分け隔てなく、一人一人、丁重に埋葬した墓の上には、60センチ四方ほどの小さな墓碑が置かれ、ドイツ兵なら十字架、ソ連兵なら旧ソ連のシンボルである赤い星、ユダヤ人ならダビデの星と呼ばれる六芒星(イスラエル国旗のシンボル)が刻まれています。

 ポーランドも今でこそ平和な町の風景がありますが、こんな片田舎でも戦闘があり、地元住民はもちろん、多くの異国の兵士も命を落としたのかと思うと、改めてヨーロッパにおける第二次大戦の凄まじさを想像せずにはいられません。
 その時は誰もが「正義」と信じて戦ったのでしょうけど、銃に撃たれ、爆弾に吹き飛ばされ、誰に看取られることなく異国で死んでいった兵士たちの気持ちを思うと、切なく、哀れです。
こうした無名戦士の墓は、戦争が終わってみれば敵も味方もなく、ただ多くの人命が失われただけだということを今に伝えてくれるのです。

 「ベルばら」では、民衆の側について戦うことを決意したオスカルが、「我らは名もなき祖国の英雄になろう」 と兵士たちを奮い立たせる場面があります。
 オスカルは架空の人物ですが、実際、オスカルと同じように、それが正義と信じて、命がけで戦った人もたくさんあったことでしょう。
 「武器をとれ、市民しょくん。パリを守ろう」 というベルナールの呼びかけは、当時の市民にとっては、理想社会の到来を予感させる輝かしいスローガンだったのかもしれません。

 しかし、時代的に「ベルばら」の続編とも言うべき『栄光のナポレオン-エロイカ』を読むと、「自由・平等・博愛」の理想を掲げて革命を起こし、身分制のシンボルである王と王妃を処刑したものの、結局はそれに代わる権力が台頭しただけで、民衆の思い描くような世の中がすぐさま実現した訳ではないということがよく分かります。
 まだ歴史というものを実感する機会に乏しく、戦争もどこか絵空事のように捉えていた若かりし頃の私は、そう考えると、オスカルはじめ、理想の為に血を流した名も無き人々の死にどれほどの意味があったのか――と空しさを感じ、嫌な言い方ですが、「犬死に」という言葉がしばしば頭をよぎったものでした。

 でもポーランドに来て、あちこちで無名戦士の墓を目にするようになってから、私はこの「名も無き人々」こそが歴史の主役であり、無言の教師であり、時を超えて生き続ける命であると思うようになりました。
 この世に意味なく生きた人もなければ、意味なく死んでいった人もないのです。
 歴史というと、一握りの名前だけが残って、名だたる政治家や偉人だけが好きに世の中を動かしてきたような印象がありますが、その足元には、いっさい名前は残らないけれども、命がけで世界を支えてきた何十億という人間の存在があるのです。その一人一人の名前は、もはや誰に語られることもありませんが、現代を生きる私たちは、確かにその人たちの流れの続きにあるのです。

 第二次大戦はもちろん、バスティーユ襲撃で命を落とした名も無き人々も、その一人一人の存在がつぶさに語られることはありませんし、これから先もないでしょう。だからといって、彼らの死は無駄ではありません。名も無き人々の墓碑は未来に向かって、誰が語るよりも確かな平和のメッセージを送り続けてくれるのです。
 そして、それこそが、「英雄」と呼ぶにふさわしいものではないでしょうか。

 我が家の近くの無名戦士の墓には、その一つ一つに野バラが植えられています。多額のお金をかけて立派な慰霊碑を建立するより、死者を悼む気持ちにあふれていると感じます。
 今も無言で訴えかける無名戦士の墓と、誰が植えたか分からない野バラを見る度に、世界の平和を祈らずにはいられないのです。(優月まり)

参照ページ
『ロトゥンダ』 http://malmaison.enf.pl/photo-28
ザモシチ市内にあるナチス・ドイツの処刑場跡。
ここで8000人以上のポーランド人やユダヤ人、ソビエト兵が犠牲になりました。
ここにもたくさんの無名戦士の墓があります。

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/08/09 11:00:00 天の涯から―東欧ベルばら漫談 | | トラックバック (0)

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