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e-book Japan ベルサイユのばら

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2007年9月28日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

とっても恐ろしい姉妹愛の物語

 著者自身には姉妹はいないのだが、女同士ゆえか、姉妹というのはなかなか難しい間柄であるようにみえる。「ベルばら」に登場する姉妹といえば、ジャンヌロザリーだが、この二人の間柄も波乱に満ち、複雑な感情が行き来している。

ジャンヌは自分勝手で、ちっとも妹を省みないのに対し、ロザリーはひどい仕打ちを受けても姉を気遣い続けた。
しかし、最後にはこの優しい妹に、悪女で名をはせた姉が引導を渡されることになる。ロザリーは牢獄から逃亡したジャンヌからの手紙をオスカルにたくし、ジャンヌの居場所を知らせたのだから。

あの土壇場で自分の居場所が分かってしまうような手紙を書いたジャンヌは、ロザリーは決して自分を裏切るまいと、彼女の姉妹愛を信じていたはずだ。だが、結果的にロザリーはそれを裏切った。なぜ、ロザリーはそうしたのだろうか。
二人の間に通う複雑な姉妹の情愛を思うとき、ギリシャ・ローマ神話にある恐るべき姉妹愛の物語が頭に浮かぶ。

トラキアの王テレウスが、アテナイの王女プロクネと結婚した。まもなくふたりの間には王子も誕生し、婚姻の女神ヘラに祝福された幸せな結婚であるかのように見えた。だが、実はその結婚を見守っていたのは不吉なエリーニュース、復讐の女神であった。

プロクネには仲のよい妹ピロメラがいた。嫁いで5年が経ち、彼女は美しい乙女に成長したであろう妹に会いたくてしかたなかった。そこで夫テレウスに頼み、ピロメラをトラキアに連れて来てもらうことにした。ピロメラも姉に会いたい気持ちは同じで、喜んでトラキアへの船に乗った。

テレウスは、その時獲物を捕らえた鷹さながらの目で乙女を見ていた。テレウスは一目見て義妹であるピロメラの美貌に心奪われ、なんとしてでも思いをとげようという邪な感情を抱いていたのだ。

トラキアに到着するやいなや、テレウスは羊小屋にピロメラを引きずりこみ、乱暴に思いをとげた。そして絶望して怒り、自分を罵ったピロメラの舌を剣で切り落とした。声を奪われ、弱りきった身体をこのテレウスはさらに苛みもしたというが、彼女の命を奪いはしなかった。しかし、姉である妻にはいかにも悲しげな様子で、妹は死んだと伝え、それを聞いたプロクネは嘆き悲しんだ。

1年後、プロクネの元にひとりの女が訪れた。女が持参した織物を見た時のプロクネは言葉を失い、青ざめるばかりだった。
織物はピロメラの手によるもので、そこにはテレウスに受けた蛮行が、彼女の悲惨な運命が、絵巻のように織り込まれていたのだ。

プロクネはディオニソスの祭の騒ぎに乗じて、こっそり妹を羊小屋より救い出した。自分の本意ではないが姉の夫と関係をもってしまったことを申し訳ないとすら思っているピロメラの哀れな有様に、夫への復讐心が沸きあがってきた。夫にとって最も痛烈な復讐とはなんだろう。その時、プロクネの冷たく燃えるような目に可愛いさかりの幼いわが子の姿が映った。
「おまえは、なんてあの人に似ているのだろう」
プロクネは小さな息子にその手を伸ばす。母親の尋常ではない様子に、子供は「お母さん!お母さん!」 と泣き叫ぶ。その声を聞いて、プロクネは最後の迷いを打ち払った。かわいそうな妹はもはや叫ぶこともできないのだ。

妃が給仕する王のその夜の食卓には、おいしそうな肉料理が湯気を立てていた。
「妃よ、王子はどこにいる?」
テレウスの質問は、プロクネに残酷な快感を与えた。この男が苦しみのたうつ様をもうまもなく見ることができる。
「お呼びの子は、あなたの中にいますわ」
その声と同時にまだ血に髪を濡らしたピロメラがおどり出て、テレウスの顔に小さな王子の無残な首を投げつけた。
テレウスの胃袋は、今や幼子の棺だった。

姉妹とはいえ、ロザリーとジャンヌはあまりにも違う。ロザリーは姉の手紙を受け取った時、姉妹の情愛より、自分自身の良心に、生き方に従ったのだろう。
プロクネにも妹からの織物を受け取った時、違う選択肢はあったかもしれない。だが、妹と憎しみを共有して、その暗い炎に姉妹に流れる血を加えて何倍にも燃え上がらせることを選んだのがこの結果だ。

つくづくロザリーがジャンヌと同じ性格でなくって良かったなあと思わずにはいられない。(米倉敦子

《参考文献》
「変身物語」オウィディウス作 中村善也訳 岩波文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/09/28 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (1)

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