アニばら解体新書
アニメから何が見えますか~ふたつの革命を見比べて
我が家に「アニばら」旋風が吹き荒れていたころ、私と弟は毎日のようにベルばらの原作マンガとアニメを比較しては熱く語りあっていました。
弟 「おれはオスカルとアントワネットの別れの場面を入れた点では、アニメ版を評価するけどね。原作だと二人の最後の場面は、フェルゼンについて会話を交わすだけなんだよね。その後、お互いに相手のことをほとんど思い出さないし。」
私 「ああ…、アニメではオスカルとアントワネットは、はっきりと決別しているからねえ。アニメの、“オスカルが革命に参加していたにもかかわらず、アントワネットが彼女のことを懐かしい思い出として胸に秘めている” のは、いい変更だよね。
それとルイ16世。原作ではフェルゼンとアントワネットを見守っているけど、アニメにはフェルゼンを牽制する場面がある。
礼拝堂でルイ・ジェゼフの病気を嘆くアントワネットに、フェルゼンが話しかけようとするところ。ルイ16世が後からやってきて、穏やかだけど力強く、たった一言“前を失礼しますよ”って言って、フェルゼンに立ちふさがる。あの一言にこめられた緊張感。声優も演出もすごいよね(第33話「たそがれに弔鐘は鳴る」)。原作の閣下とはまた違って人間的で面白いなと思った。
なんかさ…、大筋で同じ道をたどっているのにこんなに原作と印象が違うアニメってあまりないよね。」
弟 「どちらも描いてるのは“革命”なのにねー。少女の成長のドラマとしての革命と、歴史の中のドラマとしての革命。ベクトルが全然違う」
ドラマの方向性がまったく違う“ふたつのベルばら”。
アニメ版は、アニメ版として描こうとしたドラマにあわせて、原作の持ち味を大幅に変更しています。ですから、アニメ版はどうしても受け入れがたいという方もいらっしゃるでしょう。一方で原作の革命描写に当時の少女マンガとしての限界を感じてしまう方もおられるはずです。
しかし、少し立ち止まって“どうしてそう感じるのか”を考えてみてください。
「どうしてアニメのオスカルはすぐにアンドレに告白しないのだろうか?」
「どうしてアニメのサン・ジュストはテロリストなんだろうか?」
「どうして最後にオスカルはバスティーユ陥落を見ることができないんだろうか?」
アニメを観ることで生まれた疑問を、何度も問い直すことで、必ず“自分にとってこの作品はどういう意味を持つのか”という核の部分に行き当たることができると思います。私はこのアニメに出あい、原作とアニメ両者の違いを受け止めて分析していく過程で、「ベルサイユのばら」という存在が自分にとってなんだったかを何度もふりかえることができました。
そしてそれは、アニメが原作と違うからこそできる楽しみ方なのです。
それでは、40話「さようなら 我が愛しのオスカル」を本連載の締めくくりとして紹介したいと思います。40話では、海のそばで畑を耕しているアランの元に、ベルナールとロザリーが訪ねてきます。つらつらとオスカル死後のフランス革命の道のりを語るベルナールたち。そして、ベルナールは今書いている「フランス革命小史」で、ぜひオスカルとアンドレ二人のことにふれたいと思っていると打ち明けます。
牢獄でアントワネットに託された紙のバラ(第10回「暗君と忠臣のドラマとして」参照)を手にしたロザリーはこう言います。
「 “ロザリーさん、このバラに色をつけて下さいな、オスカルの好きだった色を”そう言われて、あらためてはっとしました。……私、オスカル様がどんな色のバラが好きだったかなんて……聞いたことがなかったんです」
少しほほえんで答えるアラン。
「オスカルは知らねえが、アンドレならきっと、白が好きだって言うぜ」
「じゃあ…このままのほうがいいですね」
そうして、波の音をバックにアニメ版「ベルサイユのばら」は静かに幕をおろします。
…………………
さて、このラスト、皆様はどう受け取られるでしょうか?
実は私、3回目の視聴の時に「ちょっと、これ“あしたのジョー”だよ! オスカルは燃え尽きて真っ白な灰になったんだよ!」 と口に出して、弟と一緒に爆笑してしまいました…。1回目は感動にうちふるえていたというのに!
さておき、様々な解釈が可能なアニメ版ベルサイユのばらにふれることで、皆様にとっての「ベルサイユのばら」がより豊かになること願い、筆をおきたいと思います。長い間、お付き合いいただきありがとうございました。(池田智恵)
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《参考文献》
■「少女マンガジェンダー表象論」彩流社 押山 美知子著
今日本で発行されている本の中でもっとも丁寧に“少女にとってオスカルは何者だったのか”を分析した本。ベルばらファン必読です!
■「戦後少女マンガ史」ちくま文庫 米沢義博著
■「ベルサイユのばら大事典」集英社
■「私の居場所はどこにあるの?」学陽書房 藤本由香里
■「紅一点論」ちくま文庫 斎藤美奈子著
■「教養としての〈まんが・アニメ〉」講談社現代新書 大塚英志・ササキバラゴウ共著
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/09/21 11:00:00 アニばら解体新書 | Permalink | トラックバック (0)
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