世界史レッスン
パイレーツ・オブ・カリビアン―女性版 1720年
~アントワネット生誕35年前~
カリブの海賊は男ばかりとは限らない。驚くことに、オスカルのような、戦う男装の麗人も実在した!
1720年、ジャマイカ沿岸に停泊していた海賊船を、イギリス国王の命を受けた武装船が急襲する。酒盛り中だった海賊たちはふいを突かれ、多くは逃げまどったが、ふたりの海賊だけは銃や剣を手に最後の最後まで抵抗を続けた。
しかし多勢に無勢、激しい戦闘の末、ついにふたりとも逮捕されてしまう。裁判にかけられ、他の仲間と同じく縛り首になるものと思われたが、意外な事実が判明。このふたり、男ではなく女で、その上どちらも妊娠中だったのだ!
海賊といえば荒くれ男の代名詞みたいなものなのに、いったい彼女たちはどんな経緯で髑髏(どくろ)船などに乗り込んだのか。
アン・ボニーは裕福な弁護士と召使との間に生まれた。若くして海賊と駆け落ちし、やがて自らもその道へ入ったといわれる。逮捕時は船長の愛人で、男装はしていても女だということはみんな承知していた。
一方メアリ・リードは、小さなころから男として育てられ、陸軍の騎兵隊へ入った。大柄だったせいか、誰からも女とは見破られなかった。決闘沙汰で人を殺したこともある。
そのくせどういうわけか、軍隊の同僚とちゃっかり結婚もしているのだから、並みの女性とはやることが違う。ただし夫が早くに亡くなってしまったのが運命の分かれ道で、彼女は再び男装し、今度はアンのいる海賊船の乗組員となった。
事実かどうか定かでないが、アンは新参のこのハンサムな若者(?)メアリに熱を上げ、船長は嫉妬したという。もちろん途中からメアリは素性を明らかにし、3人だけは秘密を共有した。だが他の海賊たちは、裁判で初めてメアリが女と知り、仰天したらしい。
それにしても、ではメアリのおなかの子はいったい誰の子なのだろう?3人だけの秘密といいながら、海賊のうちの誰かとこっそり恋人関係にあったのか、船長の子なのか、それとも妊婦は処刑されないと知って、裁判中に牢番でも誘惑したのか?
彼女たちのその後だが、アンは脱獄してイギリスへ逃げたといわれる。メアリの方は残念ながら翌年、獄中で熱病にかかって死んでしまった。(中野京子)
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投稿者 中野京子 2007/10/16 8:29:55 世界史レッスン | Permalink | トラックバック (1)
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朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第84回目の今日は、「パイレーツ・オブ・カリビアンーー女性版」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/10/post_79cd.html
カリブの海賊だったふたりの女性、アン・ボニーとメアリ・リードについて書きました。
彼女たちが「伝説の女海賊」と呼ばれるようになったのは、皮肉にも逮捕されたからであり、しかもそのとき妊娠していたからだ! そうでなければ女性ということがわから... 続きを読む
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