世界史レッスン
もしこのふたりが結婚していたら・・・ 1683年
~アントワネット生誕72年前~
皮肉屋のバーナード・ショー(ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作『ピグマリオン』の作者)は、ある女優から「あなたの頭脳とわたしの容姿を持ち合わせた子どもが生まれたらステキよね」と暗にプロポーズされ、「わたしの容姿とおまえさんの頭脳を持った子ができたら、どうするんだい」と言い返した由(嫌な男ですね!)。
歴史にはいろんな「if」があるが、実際に結婚話がとりざたされた王や女王が、「もし」ほんとうに結ばれていたなら、さてどうなったか?
第1例――イギリス絶対主義最盛期を導いた老練なエリザベス1世は、自らの結婚話を餌(えさ)に近隣諸国の王たちを長年翻弄(ほんろう)し続けたが、夫君候補に名乗りをあげた中には、ロシアのイワン4世もいた。
父ヘンリー8世譲りの激しい気性を持ち、女官を打ったり廷臣を拳(こぶし)で殴ったり、あげくに鬱憤ばらしで飼い猫を壁に叩きつけて殺したとさえいわれるエリザベスと、誰彼かまわず長杖で打ちすえ、実の息子まで(誤ってとはいえ)死なせてしまった雷帝イワンとの間の子どもなら・・・空前絶後の乱暴者まちがいなし!
第2例――フリードリヒ大帝とマリア・テレジアにも、仇敵どうしになる前の若いころ、縁談が持ち上がったことがある。結婚していれば、大帝国はできてもおそらく子どもは生まれなかったろう(女嫌いのフリードリヒですから)。ということは、マリー・アントワネットの悲劇もなかったし、『ベルサイユのばら』もなかった?
第3例――「アル中&ゲキ太り女王アン」で書いたように、アン女王の死後、ドイツ人ゲオルクがジョージ1世としてイギリス王になったわけだが、戴冠のはるか以前、このふたりの結婚も真剣に討議されていた。アンが彼を嫌い、1683年にデンマーク王の次男と結婚することで、この話は流れた。
もしゲオルクがアンを妻にしていれば、ゾフィア・ドロテアとの間に娘は生まれず、したがってフリードリヒ大王はこの世に存在しなくなる。よって新興国プロイセンは発展できず、ドイツはベルギー並みの小国にとどまっただろう。ヒトラーも出てこられなかったし、日独伊三国同盟もなかった?(中野京子)
★「世界史レッスン」に登場した宿敵フリードリヒ大王とマリア・テレジアのエピソード
・父王に殺されかけた軟弱息子…大王の意外な若い頃
・18世紀ヨーロッパを席巻したフランス語…フランスかぶれの大王
・マリア・テレジアの16人の子どもたち…二人は政略結婚させられそうになったことがある!?
・マリー・アントワネットの愛読書…大王の愛読書は?
・フリードリヒ大王にあこがれた小物…当時の王侯たちに人気だった大王
・ヨーゼフ2世、水戸黄門になる…大王に「急進的」と評されたテレジアの息子
・山内一豊の妻-西洋男性版…マリア・テレジアの目立たない夫
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投稿者 中野京子 2007/10/30 8:12:40 世界史レッスン | Permalink | トラックバック (1)
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» 高畑勲さんインタビューin「母の友12月号」 トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
いま書店に出ている「母の友12月号」にはアニメーション映画監督の高畑勲さんのロングインタビューが載っており、これがとても示唆に富んでいて面白い。
一部を紹介するとーー
「(絵本「おしいれのぼうけん」のアニメ化を相談され)やらないほうがいい、と言いました。せっかく子どもが想像力を働かせて絵本を楽しんでいるのに、アニメにしてもいいことは何もないんじゃないか、と思った。「想像力の余地」というようなものが、非常に大きく子どもの気持ちを動かしているわけだから」
「映画というのは舞台と違って、どん... 続きを読む
受信: 2007/10/30 9:05:26