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2007年10月11日 (木)

天の涯から―東欧ベルばら漫談

飢えの壁~カレル4世とルイ16世~

 8年前、超古代文明(注)をテーマにした日本のTV番組で、有名な考古学者が、
「ピラミッドの建造と言えば、何万もの奴隷を鞭打って強制労働させたというイメージを持っている人が多いが、あれは国家の威信をかけた一大公共事業だった。建設に従事している限り、労働者たちは生活を保障されたし、ピラミッドの完成という共通の夢もあった。そうでなければ、人力だけで、あのように巨大な建造物を造り上げることはできない」
と話していたのが非常に印象的でした。

 私も、ピラミッドの建造=強制労働というイメージがあったのですが、そう言われてみれば、何万もの人間を暴力だけで支配して、あんな巨大な石をクレーンもトラックも使わず何十万個も積み上げることなど出来ませんよね。そう考えると、建設を命じた王たちは、栄華を求める一方で自らが治める民のこともちゃんと配慮しており、だからこそ、あのような砂漠の国に高度な文明が栄えたのではないでしょうか。

 東欧随一の国際観光都市プラハ(チェコ共和国の首都)には、「飢えの壁(Hladova zed)」と呼ばれる、長さ1.2キロメートルにも及ぶ石造りの城壁があります。これは14世紀半ば、貧困に苦しむ民を救うために、神聖ローマ皇帝でボヘミア王でもあったカレル4世があえて必要のない壁作りの仕事を与えたもので、善政の象徴として今に残されています。名君と仰がれたカレル4世の統治により、プラハを中心とするボヘミア地方は空前の発展を遂げ、後にカフカドヴォルザークアルフォンス・ミュシャといった名だたる芸術家を生み出しました。
プラハの美しさは今もなお世界中の観光客を魅了し続けています。

 「ベルばら」では、冬の庭園を散策していたルイ16世が、樹木の氷を掻き落としている兵士たちに、
「ほほう、一面すっかりこおってしまったようだな。ちょうどよかった。パリから失業している男たちをあつめて、氷かきをやらせるといい。賃金をたっぷりはずんでな」
と優しく声をかける場面があります。
 このエピソードを読んだ時、私は、「なんて賢い王様かしら」と思ったものでした。
 ただ施すだけだと人間のプライドを傷つけることがありますが、労働の対価として支払われるものは、物質的満足のみならず精神的な充足をももたらすからです。

 そうしたルイ16世の言葉に感動した兵士たちは、
「まったくかわった王さまだよ。めかけのひとりももたないで、王后陛下が豪華な毛皮を身にまとっておられるときも、ごじぶんは質素なコート一枚で……」
と、王の善良さを語ります。
 こうした国民への思いやりが絶えず形に表れていたら、貧窮にあえぐ国民感情もまったく違ったものになっていたかもしれません。
 単純な例えになりますが、芝居好きな王妃のために豪華な劇場を建設し、国中の失業者を雇うとか、王子や王女の誕生日には恵まれない子供達にもプレゼントを振る舞うとか、豊かさを民と分かち合い、愛情を示す方法はいくらでもあったと思います。
 せっかく君主としての聡明さを持ちながら、それを発揮することなく、断頭台の露と消えたルイ16世の運命を思うと、彼にもう少し人間的な強さがあったら――と惜しまれてなりません。

 日本も、若い世代の非正規雇用の増大と、それに伴うワーキングプア問題が深刻化しています。働く意志があっても安定した職が無いようでは、生活はもちろん、人の心まで荒んでしまうのではないでしょうか。国力の維持発展を望むなら、意欲や能力に応じて誰もが平等にチャンスを掴めるよう、安定した雇用を創出するのが、政治経済を担う人達の務めだと思います。
 国民の生活を顧みず、貴族だけで栄耀栄華を謳歌したルイ16世の治世は、「革命」という最も厳しい形で終わりを告げました。
 夢も仕事もない国の行く末が気になるところです。(優月まり

(注)「超古代文明」とは、四大文明が成立したとされる紀元前4000年頃より以前に存在したとされる、非常に高度な文明を指す呼称で、代表的なものに、「ムー大陸」「アトランティス」などがあげられます。日本では、90年代後半、超古代文明をテーマにしたグラハム・ハンコックの著書『神々の指紋』が大ブームとなりました。

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/10/11 11:00:00 天の涯から―東欧ベルばら漫談 | | トラックバック (0)

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