世界史レッスン
公開死体解剖ショー 1836年
~アントワネット没後44年~
アンデルセンの片思いの相手であり、童話『ナイチンゲール』などのモデルでもあったスウェーデンのソプラノ歌手ジェニー・リンドは、ヨーロッパ・オペラ界を引退したあと、アメリカでのコンサート・ツアーをおこなった。
これは行く先々で熱狂的な歓迎を受け、とりわけボストンでは、8ドルのチケットに対し625ドルという破格のプレミアがついて話題を呼んだ。1年半にわたる100回を超えるコンサートという、このツアーの大成功によって、リンドは「19世紀最大の歌手」との評価を得たのである。
しかしはじめオファーがあったとき、彼女は周囲からかなり反対されたのだった。というのもツアーを仕切る興行師フィニアス・バーナムを、いかがわしい人物と見なす向きが多かったからだ。
後年、アメリカ・サーカスの黄金時代を築くことになるバーナムだが、当時はニューヨークのミュージアムで、「フィジーの人魚」「シャム双生児」「親指トム将軍」「ヒゲ女」といったあやしげな見世物で当てていた。それ以前となるともっとすごい。
1836年、バーナムが仕掛けたアトラクションは、161歳(!)のジョイス・ヘスという黒人女性だった。盲目で歯のない彼女は、なんと初代大統領ジョージ・ワシントンの乳母で、その出産にも立ち会ったというのだ。呆れるが、この巡業は大受けした。
さらにヘスの死後、バーナムは彼女の遺体でもう一儲けを企む。科学的に実証するためとの名目で、入場料をとって公開解剖に付したのだ。1500人の一般人がつめかけたというから、怖い話ではないか。
解剖の結果、ヘスの年齢は100歳どころか、せいぜい70代にすぎないことが明らかになったが、にもかかわらずバーナムが興行の世界から追放されることはなかった。遺体は実は別人だった、などあれやこれやの言い逃れが奏功したらしい。
新奇を求める大衆の期待に応(こた)える術を知る彼は、ますます成功者の道を驀進(ばくしん)し、自伝も長くベストセラーを続けた。(中野京子)
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投稿者 中野京子 2007/11/20 8:08:16 世界史レッスン | Permalink | トラックバック (1)
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» バーナム&ほぼ日刊いとい新聞(世界史レッスン第89回) トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の世界史レッスン第89回目の今日は、「公開死体解剖ショー」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/11/post_5305.html#more
アメリカの興行師バーナムが、黒人女性の遺体解剖を料金を取って見世物にしたことについて書きました。当時のアメリカにおける黒人差別がなければ、考えられないような出来事です。
「スウェーデンのナイチンゲール」と呼ばれ、慈善事業家でもあったジェニー・リンドがよ... 続きを読む
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