2013年2月末をもってブログの更新を終了いたしました。 ⇒詳しく
e-book Japan ベルサイユのばら

0228delete -->

« お騒がせセレブ??アントワネット?? | トップページ | 私に罪はない! ドリュオペとルイ16世 »

2007年12月13日 (木)

天の涯から―東欧ベルばら漫談

マリー・アントワネットとミツコ~国際結婚が生んだもの~

 ポーランドは2004年5月にEUに加盟したのですが、こちらの人に意外と知られていないのが、「EU生みの母は日本女性である」という話です。(そう言うと、みんなに笑われるのですが……)
 EUの基本理念となった『汎ヨーロッパ思想』を著したリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵の母親は旧名「青山ミツコ」、史上初めて外国人貴族と正式に結婚した日本女性として知られています。

 1893年、平凡な庶民の娘に過ぎなかったミツコは、オーストリア=ハンガリー帝国の外交官として東京に赴任してきた青年貴族ハインリヒに見初められ、日本で結婚生活を始めました。2人の男児(次男がリヒャルト)にも恵まれ、夫婦は幸せそのものでしたが、1896年に夫の帰国に伴い、ミツコは今の西ボヘミア地方へと渡ります。
 不幸にも、夫ハインリヒは結婚10年目に心臓発作で急逝し、ミツコはクーデンホーフ家の当主として広大な伯爵領を継承します。そして、言葉や作法の違い、貴族社会の偏見にも挫けず、努力に努力を重ね、「黒い瞳の伯爵夫人」としてボヘミア社交界に大輪の花を咲かせたのでした。

 当時としては非常に珍しい日本人の母を持ち、その母親が異なる文化の中で懸命に努力する姿を間近に見て育ったリヒャルトが、国境を越えた平和な社会に思いを馳せるようになったのも当然至極であり、そういう意味では、ミツコという一人の日本女性の生き方が、それまで国境をめぐる争いに明け暮れていたヨーロッパ諸国の在り方に一つの方向を示したといっても過言ではないと思います。
 ポーランドがEUに加盟した時、あるTV番組の特集でリヒャルトの名前は出ましたが、彼の母親が日本女性であることは話の口にも上らなかったことが私としては非常に残念でした。

 国際結婚と言えば、マリー・アントワネットも同様ですが、ミツコが異国人の夫に献身し、立派な伯爵夫人たらんと努力したのに対し、アントワネットの方は、「フランス王妃」よりも、まず「自分自身」であろうとした印象があります。
 たとえば、オーストリア皇女のプライドと母から受け継いだ価値観に頑としてこだわり、まるで宮廷社会に挑戦するかのようにルイ15世の愛妾デュ・バリーを無視したり、国政に背を向けて、プチ・トリアノンで自分だけの楽しみに耽ったりと、王妃としての立場をまるで省みない行動が相次ぎました。
 その点、夫亡き後、クーデンホーフ家の当主として広大な伯爵領を治めたミツコは、一度、嫁いだからには「ここが死に場所」と腹を据え、従順ながらも誇りを失うことなく、相手の流儀に合わせてゆける日本女性の典型なのかもしれません。

 ミツコの国際結婚は『汎ヨーロッパ思想』を生み出し、死ぬまで「オーストリア女」と罵られたマリー・アントワネットの振る舞いは、フランス革命の発端となりました。
 異国から嫁いできた一人の女性の生き様が、歴史の全てを左右するとは言いませんが、『汎ヨーロッパ思想』も『フランス革命』も、国際結婚の産物であるように感じます。

 日本女性の国際結婚がますます増えつつある今、第二、第三のミツコは現れるのでしょうか。
 「EU生みの母は日本女性」という事が、ちょっぴり誇らしい私です。(優月まり

ミツコにまつわる小話
1) 名画「カサブランカ」に登場するラズロイングリッド・バーグマンの夫役)はナチス・ドイツに敵視され、アメリカに亡命したリヒャルトをモデルにしていると言われています。
2) ゲランの香水「MITSOUKO」は、調香師ジャック・ゲランが、クロード・ファレルの小説『ラ・バタイユ』のヒロイン「ミツコ」に感銘を受け、日本女性の典雅な美しさをイメージして創ったものだと言われています。しかし、原作者のファレルが、ミツコ・クーデンホーフという女性にインスパイアされてこの小説を書いたのだとしたら、「MITSOUKO」はやはり彼女の魂を映し出した香りと言えるのではないでしょうか。何にせよ、有名な香水に日本女性の名前が付いているのは嬉しいですね。

《参考文献》
『ミツコと七人の子供たち』 シュミット村木眞寿美著 講談社
『レディーミツコ』 大和和紀著 講談社 

お便り募集このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2007/12/13 11:00:00 天の涯から―東欧ベルばら漫談 | | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/17298350

この記事へのトラックバック一覧です: マリー・アントワネットとミツコ~国際結婚が生んだもの~: