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e-book Japan ベルサイユのばら

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2008年1月18日 (金)

アニばら不思議発見

馬車にご用心

~パリの街路を駆け抜ける馬車は格差の象徴だった?というお話~

 「ベルばら」の物語全体を通して「特権をもつ貴族」と「貧しい平民」の格差の象徴として登場するのが、パリの街路を駆け抜ける“馬車”である。
この馬車へのからみが非常に多いのが、「ベルばら」を代表する貧しいパリっ子のジャンヌロザリーなのだが…、ジャンヌは、最初から越えねばならぬ障害物とでも思っていたのか、馬車に果敢にアタックしていく。

 テレビアニメ「ベルばら」第6話『絹のレースとぼろ服』では、「お情け深い旦那さま、どうかお恵みを…」と物乞いし、馬車に乗っていたド・ゲメネ公爵に「寄るな!こじきめ!」とムチで打たれてしまうのだが、同じ第6話だから、もしかして数日後?にはジャンヌはもう、「わりかしいい馬車だ…いっちょやってみるか」と、両手を広げて馬車を止め、窓から顔をのぞかせたブーレンビリエ侯爵夫人に向かって「お情け深い奥様…」とやっている。これではまるで当たり屋常習犯であるが、馬車をカモに、体を張っていくその姿は、いまどきの日本の子供にはあるべくもないたくましさである。

 いっぽう、姉とは対照的な性格のロザリー。馬車に当たっていくどころか、当てられてばかりいる。
 当たり屋に成功したジャンヌには家出され、明日からどうやって暮らしていけばいいの?と、フランスパンを抱えてぼーっと歩いていると、そこにやってきた貴族の豪華四輪駆動馬車にさっそく当てられ倒れてしまう。
「お怪我はありませんか、お嬢さん」と、窓から声をかけるフェルゼン。ここで助け起こすわけでもなく、慰謝料も示談金もクリーニング代も払わずに去っていくのだが、ほかの貴族たちが声もかけないひき逃げ常習犯なものだから、ちょっと声をかけただけで、すばらしい紳士としてロザリーの記憶にインプットされてしまう。のちにフェルゼンとジャルジェ家で再会したロザリーは、馬車でひかれただけというのに、前にパリでお会いしましたなんて言っているのだ。

 第10話『美しい悪魔ジャンヌ』でも、ロザリーはパンを抱えてぼーっと歩いていた。ルイ16世が即位し、「これで暮らしやすい世の中になる」という噂を耳に、「本当かしら…」と明日のパンの値段を心配していると、また馬車にはねられる。走り去る馬車に、貴婦人になったジャンヌの姿を見つけて驚くロザリー

 数日後、暮らしやすい世の中どころか職場をくびになってため息をついていたところを野良犬に吠えられ、あわてて逃げだしたところを、またまた馬車にはねられる。一体何回はねられれば気が済むのか、少しはジャンヌのように注意深く街を徘徊していただきたいものだが、怪我ひとつないのが、彼女のたくましいところだ。そして、去っていく馬車を見つめながらジャンヌのことを思う。頭の中では、「馬車→貴族社会→ジャンヌ姉さん」という連想ゲームがすっかり定着しているのだった。

 そこへ追い打ちをかけるように、酔っ払いの貴族(ミラボー男爵)から「一晩わしの屋敷へ来んか…」と引っ掛けられる。そのときやっと、「貴族をカモにして金を稼ぐ」という方法がこの世にあることに気がついた彼女は、次に現れたジャルジェ家の馬車めがけ、初めて自分を売りにこちらからしかけていくのだ。そして運よくオスカルに拾われ、貴婦人としての新たな人生の幕が開ける。馬車に当てられる暇があったら当たっていけ、という教訓が芽生えたのかどうか、このあとロザリーが馬車にひかれることはなくなった。

 そうこうしているうちに、貴族の横暴を極めた「ベルばら」史上最大の悲劇が起こる。そう、ド・ゲメネ公爵の「ピエール坊や殺害事件」と、ポリニャック伯爵夫人の「ロザリーのかあさんひき逃げ事件」なのだが、ド・ゲメネ公爵は、「ピエール」という母の叫び声をよそに勝ち誇ったような笑い声を高らかにあげて馬車で去ってしまうし、ポリニャック伯爵夫人も「文句があったらいつでもベルサイユへいらっしゃい」という、「ベルばら」ファンなら誰もが口にしたことがあるであろう、あの有名な捨てゼリフを吐いて逃げていってしまった。
 「待て!このまま逃げる気か」とベルナールが非難してみたものの、事件の一部始終を見ていたパリの市民たちもみな、馬車で去っていく貴族には手も足もでない。

 しかし、パリの街が次第に不穏になり、平民が団結して貴族に暴行を加えるようになると、今度は馬車がその標的になった。第32話『嵐のプレリュード』では、オスカルアンドレが乗っている豪華な馬車に向かって「貴族だ!ひきずりだせ」と、市民が突撃。獲物を見つけた猟師のように目を光らせたパリ市民の形相は、もはやホラー映画。本当に恐ろしい因果応報の世界である…。

 オスカルアンドレは、みすぼらしい辻馬車でパリに行くべきだったのだが、国王一家が国外脱出を図った「ヴァレンヌ逃亡事件」にしても、馬車がもっとみすぼらしければ、怪しまれずに逃げ切れたかもしれない。一家の馬車は、料理用のかまど2個と酒瓶を収納する木箱がついた、大型の長距離旅行用のもので、宿駅では豪勢な馬車を見に野次馬が集まったというから、少なくともどこかの名門貴族の亡命だろうと騒がれたに違いない。そして、大型の重い馬車は速度が遅く、予定時間とのずれもこの逃亡計画の失敗につながった。

こうしてみると、馬車は、国王から平民まで、さまざまな人の運命にかかわっていたといえる。

<歴史かわら版> 馬車は男の甲斐性?
実際に、パリの狭い街路を疾走する馬車は危険な存在だったようだ。メルシェの『18世紀パリ生活誌』にも、その横暴ぶりを非難する章があるので下記に紹介したい。

『日ごろから苦情がでているにもかかわらず、この馬車を乗りまわす贅沢は何の制約も受けていない。(…中略…)犠牲者たちは、一向に実現しない改革が行われるのを待ち望みつつ、恐るべき苦痛の中で事切れてゆく。それというのも行政にたずさわっている者は、自分も豪華四輪馬車を走らせているので、当然歩く者の苦情などには一顧だに与えないからである。』

ジャン=ジャック・ルソーが、1776年に馬車の先頭を走っていたデンマーク犬に突き倒れたという記録があるが、これは、馬車を先導するために数匹の犬を走らせる「先共犬」による被害である。犬が登場する前には、「先共(さきとも)」といって、二人の男を走らせていたという。

このような愚かしい贅沢は一部の金満家によるかもしれないが、貴族だけでなく平民にとっても、馬車は、地位の向上と女性のエスコートに欠かせないアイテムで、自分の馬車を持つことは出世を目指す男の目標だったようだ。智里chisato

参考文献
メルシェ著「十八世紀パリ生活誌」岩波書店
別冊歴史読本「マリー・アントワネットとヴェルサイユ」新人物往来社

■TVアニメ「ベルサイユのばら」
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/01/18 10:00:00 アニばら不思議発見 | | トラックバック (0)

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