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2008年2月 8日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

“イカロスの翼”は勇気のシンボル?

恋する乙女の目には、憧れの相手はすてきな夢の王子さまに見えてしまうもの。それは王妃マリー・アントワネットも同じだったようで、まだ22歳の頃、始めての出会いから4年を経て再びフランスへ戻ってきたフェルゼン「まるでイカロスのように私の前に舞い降りてきた」 と心ときめかせている。

雄雄しく大空を翔る若いイカロス。日本でも「NHKみんなのうた」の『勇気一つを友にして』 という歌で知られているように、勇気ある純粋な若者の代名詞であり、恋する女性が愛しい憧れの男性を形容するのにぴったりな人物である。

しかしこのイカロス。どうして「勇気一つを友にして」飛び立つことになったのかご存知だろうか。
このことについてはまず、イカロスの父親であるダイダロスのことを語らないわけにはいかない。

ダイダロスは天才的な工匠で、魔法のように不思議なものまで作りあげる発明家でもあった。しかし、あることから住んでいたアテナイを追放され、ミノス王が治めるクレタ島に落ち延びた。

王に保護されたダイダロスは、クレタ人の女性との間に息子のイカロスをもうけた。しかし、平穏もつかの間、この天才工匠はこの地でとんでもないものを次々とつくらされることになる。
まずダイダロスミノス王の妃パシパエのために、本物そっくりの張りぼての雌牛をつくった。とある見事な牡牛に恋をしたパシパエは、これで自ら雌牛になりすまし、その牡牛との間に子までもうけてしまう。生まれたのは、身体は母に似て人間だが、頭は父に似て牛である、怪物ミノタウロスだった。

ミノス王ダイダロスに、一度入ったら二度と出られない迷宮をつくらせた。そしてこの忌まわしい不義の子、ミノタウロスを幽閉した。その頃、ミノス王はアテナイとの戦争で勝利を収めており、戦の賠償として毎年アテナイの少年少女、男女7人ずつを捧げるように要求していたが、その子どもたちは迷宮に投げ込まれ、ミノタウロスの餌食とされた。

しかし、そのアテナイの王子テセウスが、王の娘である王女アリアドネの力を借りて、ミノタウロスを見事退治する。
このとき王女に知恵を授けたのはダイタロスだったため、裏切られたミノス王は、罰として息子イカロスと一緒に、彼自身がつくった迷宮に閉じ込めた。

父子は、ダイダロス渾身の作品「蝋で固めた鳥の羽」で大空へと脱出する。ところが、若さ溢れる元気なイカロスは、父親の忠告にも関わらず、有頂天になって飛んでいるうちに太陽に近づきすぎてしまう。羽の蝋は太陽の熱で溶け、イカロスは地上へと落下し、還らぬ人になってしまった。

ダイダロスにとってこのことは、因果応報なのかもしれない。しかし、自分のつくった最高傑作によって若い息子を死なせてしまった、名匠の苦悩はいかほどのものだったか…。

この物語の中でイカロスの登場する場面はほんの少し。それなのにどうして歌になるほど注目を浴び、ロマンを感じさせるのだろうか。中心人物はどうみても、罪に罪を重ねるダイダロスとミノス王なのに。
殺伐とした展開のなかで、純粋な若者が死んでしまったとしても勇気をもって空に羽ばたいた姿は、一服の清涼剤となっているからだろうか。

思えばアントワネットは彼女を利用し、足を引っ張ろうとする人々に囲まれていた。
デュ・バリー夫人ルイ16世の娘たち、ポリニャック伯夫人。無邪気で軽率な面のあるアントワネットにとっては、狡猾な彼女たちは魑魅魍魎そのものだ。
そんなアントワネットにとって、フェルゼンの翼だけが清らかな心ときめく風を送ってくれたと感じたのかもしれない。その翼でふたりだけの夢の世界へと羽ばたけはしなかったけれど…。(米倉敦子

《参考文献》
「ギリシアの神話」 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫
「ギリシア神話」 アポロドーロス著 高津春繁訳 岩波文庫
「ギリシア・ローマ神話ものがたり」 コレット・エスタン+エレーヌ・ラポルト著 多田智満子監修 創元社

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/02/08 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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