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2008年2月22日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

良妻賢母の家庭円満術 ジャルジェ夫人とテミス

原作「ベルサイユのばら」とジャック・ドゥミ監督の映画「ベルサイユのばら」は、はっきり言って別物だ。まったく印象が違っている。
多々ある変更点のなかで、全体に影響が大きかったのではないかと私が思うのは、ジャルジェ夫人の不在である。

映画では、ばあやに抱かれた生まれたての赤ちゃんのオスカルを見たとき、ジャルジェ将軍「女を産んで、死んでしまうなんて…」 といった意味の台詞を言っている。ジャルジェ夫人は、オスカルの出産で亡くなってしまったのだ。

原作でも映画でも、ジャルジェ将軍はオスカルを男として育てるが、オスカルはそうはいっても女の子であって、異性である父親との関係は微妙なものがあった。特にジャルジェ将軍は、オスカルの運命に大きく関わる存在なのでなおさらだ。

オスカルとジャルジェ将軍の決定的な対立は、ジェローデルとの結婚話でピークをむかえる。今まで女としての人生を捨てさせておいて、今更妻となり男の人生の影で生きろというのかと反発するオスカルの言い分はもっともだ。
映画では、ただオスカルがはねつけて、ジャルジェ将軍はなんて勝手な父親だろうという印象を残すだけだが、原作では違う。

原作には、ジャルジェ夫人がいる。普段は常に受身的でおとなしいだけの夫人だが、ここでのフォローは絶妙だった。
「わたしは父上の人形ではありません!」 と自分の膝にすがって訴える娘に、もうオスカルを危険な目にあわせたくない故に彼女を結婚させたいのだという夫の真意を娘に伝える。親であるからこそ、愚かになってしまうとも。オスカルはおかげで父親の自分への不器用ながらも強い愛情を知り、親子の心からの和解へと繋がる。

ギリシャ神話に目を転じると、ゼウスの正妻はヘラだが、彼女と結婚する前にゼウスは、実はすでに結婚している。ゼウスのはじめの妻になったのは、掟の女神、テミスである。(智の女神メーティスのほうがゼウスと先に結婚したという説もある)
テミスはゼウスの母親レアの姉妹だから、ゼウスにとっては叔母であり、姉さん女房だった。また、一説によると、テミスはゼウスの養育者でもあった。

右手に天秤、左手に剣をもった姿がおなじみで、日本の最高裁判所でも法の守護者として飾られていている。そんなテミスは、掟を破った者をいかにも厳しく断罪しそうに思える。しかし、実際はとても温厚で、平和を愛するがゆえに掟を大事にする女神なのだ。ゼウスとテミスの娘である三姉妹も、秩序正義、そして平和を司る。黄金のリボンをつけた乙女である女神たちは、3人合わせて“正直な”ホーライと呼ばれている。

ゼウスがヘラと結婚したあと、夫のことで怒っているヘラをいつもオリュンポスに出迎えるのはこのテミスである。嫉妬深く、ゼウスが手を付けた女性をことごとくひどい目にあわせるヘラだが、意外なことに、テミスとは大変仲良しなのである。おそらくヘラは叔母でもあるこの優しい女神の膝に、娘のような気持ちですがって慰められたのだろうし、テミスはさりげなくゼウスをフォローするのも忘れなかっただろう。

一見すると、自己主張してなんぼの神様たち。しかし、本当の意味でテミスこそが崇拝されている女神なのかもしれない。(米倉敦子

《参考文献》
「ギリシアの神話」 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫
「ギリシア神話」 アポロドーロス著 高津春繁訳 岩波文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/02/22 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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