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2008年3月14日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

タイタンの力はなくても―アンドレの起こした奇跡

 しつこいようだが、やっぱり原作「ベルサイユのばら」とジャック・ドゥミ監督の映画「ベルサイユのばら」は、かなり違う。
 前回はジャルジェ夫人の不在について書いたが、なんといっても「ベルばら」ファンにとって見逃せないのはアンドレの死についてだろう。

 原作にしても映画にしてもアンドレは1789年7月、フランス革命勃発直後、銃弾に倒れる。だが、その状況が原作と映画とでは全く異なる。
 原作ではアンドレはオスカルと彼女に従う衛兵隊と共に武装して馬で出陣し、オスカルを身を挺してかばったがために銃弾をあびて死んでしまう。
ところが映画アンドレは、オスカルと共に“素手”で一市民として革命に参加する。彼は気勢をあげる市民で溢れかえる道路を行進する途中でオスカルとはぐれ、オスカルが知らないうちに“たまたま運悪く”軍隊の放つ銃弾にあたってしまい、死んでしまうのだ。
 
 そしてもう一つ欠かせない重要な変更点、それは原作アンドレは目が見えないが、映画では目が見えるということだ。映画アンドレは目が見えるのにオスカルを見失い、撃たれて死んでしまったが、原作アンドレはほとんど視界が真っ暗だったのにも関わらずオスカルをかばって死んでしまったのである。あんまりといえば、あんまりな違いだ。
しかし、なんで目の見えないアンドレがオスカルをかばえたのかは、とても不思議だ。
 
 素晴らしいナイトであった原作アンドレだが、彼はとことんまで奥ゆかしい。出陣前夜に「アンドレ・グランディエの妻に……」 というオスカルに、ずっとオスカルをこの腕で抱きたいと長年切望していたのに、アンドレはこう答えた。
自分には何も無い。地位も身分も。そして目の光を失った今では、男としてオスカルを守るためのタイタンの力もサテュロスのひづめさえ無いと
 
ところで、ここでアンドレが男の力の象徴として“タイタンの力”と言っているが、この“タイタン”とは、ギリシャ・ローマ神話に登場する12柱の神、ティターン神族のことである。ティターンは、英語でタイタンと発音される。映画で有名な豪華客船タイタニック号の名もこのティターンからきており、その言葉の響きはご存知の方も多いと思う。

ティターン12神は、神々の王であるゼウスを頂点にいただくオリュンポス12神を“新しい神”と呼ぶのに対して“古い神々”と呼ばれ、ゼウスの祖母である大地母神ガイアと、その夫、天の神ウラノスとの間の12人の子どもたちを指す。ゼウスの母であるレアも、父であるクロノスもティターンのひとりだ。

ティターン12神で最も強い力をもつのは、ガイアの末の子であるティターンの王クロノスだが、そのクロノスがウラノスに代わって王となる過程は凄惨そのものだ。
ウラノスはガイアの生む子どもたちを嫌っており、生まれた子どもたちを次々に大地であるガイアの胎内に押し込めてしまった。それを嘆いたガイアは鋼鉄の鎌を手にし、息子たちに語りかけた。「非道なお前たちの父親を罰する者はいないか」。
他のティターンは怯えていたが、最も野心的で勇気のあるクロノスだけが母親から鎌を受け取り、父親に対してそれを振り下ろし、父親を子どもが作れないように去勢してしまったのだ。そうして、ウラノスに代わって、クロノスは神々の頂点に君臨する。

だが、因果応報。姉妹のレアと結婚したクロノスは、今度は自分の子どもたちを恐れ、害するようになる。そして、父ウラノスと同じように、自らの末の息子(ホメロスの説では長男)ゼウスに排除されてしまう。

時間の神として時をも自由に操るクロノスの力はすさまじく強い。しかし、そんな荒ぶる神の力より、オスカルが言うように「心やさしく、あたたかい」男性が愛する女性のために起こした奇跡のほうが、数百倍も尊く、強く心に響くように思える。(米倉敦子

《参考文献》
「神統記」ヘシオドス作 廣川洋一訳 岩波文庫
・「ギリシアの神話」カール・ケレーニイ作 植田兼義訳 中央公論社

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/03/14 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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