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2008年4月25日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

高すぎる高慢の代償 ポリニャック伯夫人とアラクネ

ポリニャック伯夫人について、どうしても分からない点がある。
アントワネットは、初めてポリニャック伯夫人に出会ったときに、その清楚(せいそ)で優しげで謙虚な様に心打たれてしまう。お金がないのでベルサイユに思うようには来られない。そんな“恥ずかしい”ことも、たおやかな様子で言ってのける彼女はなんて心の美しい人だろうと。

ところが、その後ポリニャック伯夫人は、アントワネットにおねだり三昧、天使のような顔をして、人を馬車で轢いておきながら「文句があるならベルサイユでいらっしゃい!」だとか、舞踏会で「誰か私に席をあけなさい!」 とのたまうなど、高慢な本性を見せつける。

とすると、初めて出会ったときのあの謙虚さは、アントワネットを篭絡(ろうらく)するための“演技”だったのか。
いや、そうともいいきれないのでは?なぜかというと、ポリニャック伯夫人が“演技”をしたとしても、必ずしもアントワネットがほだされてくれるとはかぎらない。だとしたら、ポリニャック伯夫人は、アントワネットに特権を与えられることにより、調子に乗って、どんどん高慢になったのかもしれない。

いずれにしても、行き過ぎた高慢は、悪い結果をもたらしてしまう。
ギリシャ神話でも高慢になりすぎたことにより、最悪な結果となるエピソードは枚挙にいとまがない。その中でも、織物自慢のアラクネのエピソードは印象的だ。

オリュンポスでも最も崇拝を集める女神アテナは、アラクネという娘を憎んでいた。
本来アラクネなんぞは、女神アテナからすると、雑草や石ころと大差ない、取るに足らない存在だ。なぜなら、アラクネは賤(いや)しい職人の娘にすぎない。しかし、アラクネは織物の素晴らしい技によって広く名声を勝ち得ていた。人間だけではなく、ニンフたちまでもが彼女の技術を賛美していたのだ。
織物の技術はアテナの領域であり、本来アラクネはアテナを師と仰がねばならない。だが、アラクネはそうしなかった。それどころか、アラクネは自分の技がアテナより勝ると豪語し、女神は自分と勝負すべきだと挑発した。人、いや神一倍プライドの高いアテナは当然腹を立てた。

ある時、よぼよぼの老婆が現れ、「女神の許しを請いなさい」 とアラクネを諭した。しかし、アラクネは「年寄りの説教なんて!」 と鼻でせせら笑う。さらに「女神は自分でなぜ来ないのかしら?」 と自信たっぷりに言い放った。
「もうおいでになっているのだよ!」
老婆の姿は脱ぎ捨てられ、冷たい怒りを瞳に宿す女神アテナが現れた。老婆は何を隠そう、女神アテナその人だったのだ。

かくて、アラクネの望みどおり、アテナVSアラクネの織物勝負が始まった。
女神としての偉大な誉れを織り上げた女神の織物は見事なものだった。しかし、アラクネの方が一枚上手だった。女神相手に動じるどころか、不敵なアラクネは神々による破廉恥な所業の数々を織り上げた。アラクネの作品の素晴らしさは、いくらアテナでもけちをつけようのないほどのものだった。だが、そのことがさらに女神の怒りに火をつけてしまった。
激怒したアテナは、織物に使う杼(ひ)で3度、4度とアラクネの額を打ちつけた。女神に暴力をふるわれたのがよほどショックだったのが、気の強いアラクネなのに、首をくくって死んでしまった。

ゆらゆらとぶら下がる娘の身体を見て、アテナは正気に返り、さすがに哀れを催す。そこで、アテナは魔法の草の汁をアラクネにふりかける。すると、アラクネの髪の毛はごっそりと抜け落ち、鼻も両耳も溶けるように落ちていく。「生きてはいるがいい。けれど、お前はずっと永遠にぶら下がっているがいい」。ちっぽけな小さな身体になってしまったアラクネは、糸を紡ぐ蜘蛛に変わっていた。

復讐をするくらいなら、なぜそもそも女神アテナは、アラクネに織物の類稀(たぐいまれ)な才能を与えたのだろうと思ってしまうが……。アントワネットにしろ、アテナにしろ、与える者もなかなかそこまで考えるにいたらないようだ。(米倉敦子

《参考文献》
「変身物語」 オウィディウス著 中村喜也訳 岩波文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/04/25 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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