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2008年5月 9日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

出産に立ち会ったのは誰? レトとマリー・アントワネット

 分娩室の扉の前で男性がそわそわしている。ようやく扉の奥から元気な赤ちゃんの泣き声がしてきて、彼は顔を輝かせる。昔はそんなシーンがよくドラマなどで見られた。だが、最近では男性も妊婦の傍らでその決定的瞬間を見守ることも多いようだ。出産の時、夫に立ち会ってもらいたいという女性は少なくないのだろうが、“大勢の他人”に出産に立ち会ってもらいたいという人はいないだろう。

フランス王妃マリー・アントワネットが第一子、マリー・テレーズを出産しているその部屋では50人もの人が苦しむ妊婦に注目していたという。
フランス王妃の出産は、国をひいてはヨーロッパ全体においての一大事だ。王位継承者誕生ともなれば、多くの人の運命にも関わる。だから、私的なことに留まらず、国を上げての行事になってしまうのも仕方がないのだろう。
とはいえ、いくらフランス王妃といっても超人でも女神でもなく、ふつうの生身の人間だ。
それなのに、ツヴァイクの「マリー・アントワネット」によると、窓すら開けていない閉め切った蒸す部屋で、人いきれと酢と香油の強烈な匂いの中、7時間苦しんだというのだから、まさに拷問。同情を禁じえない。

しかし実は女神だって出産は大変なのだ。
ティタン神族の娘であった女神レトは、神々の王ゼウスに愛されて男女の双子を身ごもった。女の子のほうは陣痛もなく出産したが、男の子のほうはすんなりとはいかなかった。それはギリシャの山という山、島という島が、レトに出産の場を提供することを拒否したからだ。
その理由は1つに、生まれてくる男の子があまりにも強大な力を持っており、その力に大地が恐れを抱いていたからということ。また、嫉妬深いゼウスの正妻ヘラの要求に大地が応えたともいわれている。

なにはともあれお腹の大きなレトは辛いさすらいの末、ようやっと荒涼とした岩ばかりの島、デロス島に受け入れられて、出産の時を迎えた。
しかし、9日間の想像を絶する苦しい陣痛であるにも関わらず、子どもは生まれてこない。
その場には夫であるゼウスはいなかったが、アントワネットと同様他人が立ち会っていた。ディオネ、レア、テミス、アンピトリテなどなど、もっとも高貴な女神たちであった。だが、もちろんヘラはいないし、一番肝心な産婆の女神エイレテュイアがいない。愛人の出産を妨げるために、ヘラが自分の娘であるエイレテュイアを足止めして、デロス島へ行かせないようにしていたのだ。

レトの苦しみを気の毒がった女神たちは、翼をもつ使者の女神イリスを黄金の首飾りで買収した。イリスはエイレテュイアを説得し、彼女をともなってデロス島へと飛んで来た。エイレテュイアがデロス島へと降り立った途端、レトは男の子を産み落とした。その途端、大地は笑い、麗しい女神たちは一斉に歓声をあげたという。
「どうか竪琴と弓をわたしに与えよ。そうすれば、わたしの神託で人間たちにゼウスの誤りなき神意を宣べよう」。生まれて早々、凛と宣言した美しい男の子の名前はアポロン。ゼウスにとって数多いる息子たちの中で最も待ち望まれた、最愛の息子であった。

出産に大変苦労したレトだが、娘アルテミスと息子アポロンを愛し、また彼らに愛され、この高貴で有名な子どもたちによってこの上なく幸せになった。
それはアントワネットがあれだけの苦しみにも関わらず、子どもたちをなによりの宝と思い、愛情を注いだのとまったく同じ気持ちだったのだろう。(米倉敦子

《参考文献》
「マリー・アントワネット」 シュテファン・ツヴァイク著 中野京子訳 角川文庫
「ギリシアの神話」 カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中央公論社

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/05/09 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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