世界史レッスン
王妃は娼婦に憧れた? 1725年
~アントワネット生誕30年前~
1725年、ポーランド王女マリ・レチンスカが、ルイ15世のもとへ嫁いできた。地味で目立たず魅力のない22歳と、「憂いをふくみ、氷のように冷たく非情な美青年」15歳のカップル誕生だ。
精力絶倫を謳(うた)われた若い王は、この年上妻に12年で10人の子どもを産ませた後は完全に興味を失い、もっと気の利いた、もっと自分を愉しませてくれる美女たちの間を渡り歩くようになる。
夫からも臣下からも見捨てられ、愛人を作る才覚もなく、ファッションにも政治にも関心のない王妃は、お定まりのごとく退屈を美食へと振り向けた。いや、美食というより、ただ料理を大量に物も言わず胃袋へ詰め込んだだけとの説もある。食後にはヴィオラやクラブサンを弾いたが、それすらとてもへただった、というから泣ける。
彼女はまた、しばしば髑髏(どくろ)を前に瞑想(めいそう)もした。無芸大食に瞑想とは似合わないが、当時の宮廷は、人生の無常や虚飾と対峙(たいじ)するため「髑髏礼拝」が流行していたのだ。お気に入りの頭蓋骨は、かつての社交界の華ニノン・ド・ランクロだったらしい(王妃はそう信じていた)。
絶世の美女ニノンは、枢機卿(すうきけい)リシュリーやら劇作家モリエール、箴言(しんげん)集で知られるラ・ロシュフーコー伯など、そうそうたる人物を相手にした17世紀の高級娼婦で、あまりに派手に動いたため、いっとき修道院へ入れられてしまったほど。しかし彼女を気に入ったスウェーデンのクリスティーナ女王の尽力で解放され、今度はサロンを開いて女主人として君臨する。
70歳になってもニノンの美貌は衰えなかったようで、男たちの求愛はとどまらなかった。かつて産みっぱなしにして捨てた息子がそうと知らず言い寄ってきて、あげくに自殺してしまったとの伝説(さすがに信じがたい)さえ残っている。
ルイ15世の妃はそんなニノンの髑髏に向かい、何を語りかけたのだろう?
愛にあふれた華やかな人生も儚(はかな)いものよ、と溜め息をついたのか、それとも、王妃の身分より娼婦ニノンになりたかった、とひそかに羨んでいたのかしらん・・・(中野京子)
★中野京子さんの新刊情報★
お待たせしました!「怖い絵」第2作が出ました!
「怖い絵2」(朝日出版社/価格1,890円)
今回登場する絵は、「世界史レッスン」でも登場した『カルロス2世』の肖像画(「血族結婚繰り返しの果てに」)、ホガースの『精神病院にて』(「観光名所だった精神病院」)や、「神々のプロフィール」でおなじみのギリシャ神話のエピソードを描いたルーベンスの『パリスの審判』など20点。あの名画の印象が変わります。
⇒詳しい本の内容はbook.asahi.com でチェック!
★お便り募集★このコラムをお読みになった皆さんの感想や質問をお待ちしています。 ⇒こちらの「ベルばらKids専用フォーム」からどうぞ。
投稿者 中野京子 2008/05/13 8:25:59 世界史レッスン | Permalink | トラックバック (1)
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165303/41190331
この記事へのトラックバック一覧です: 王妃は娼婦に憧れた? 1725年:
» 王妃はつらいよ(「世界史レッスン」第111回) トラックバック 中野京子の「花つむひとの部屋」
朝日新聞「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」、第111回目の今日は、「王妃は娼婦に憧れた?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/05/post_e71f.html#more
ルイ15世妃マリ・レチンスカの退屈な日々について書きました。
夫に全く顧みられないということでいえば、先代ルイ16世妃マリー・テレーズも全く同じで、彼女はココアに情熱を注いでいたのだった。それについては「ココアだけでは癒されず」もお読みください。⇒... 続きを読む
受信: 2008/05/13 9:07:34


単行本:第1巻。Kidsたちが大活躍!
単行本:第2巻。好評発売中
単行本:第3巻。最新刊!
カプセルフィギュア:衣装の着せ替えができます
マグカップ:ピンクと白の2種類選べます
マスカラ:オスカルにする?アントワネットにする?
大人のぬりえ:ビギナー編・アドバンス編
大人のぬりえ:着せ替えやカードなどおまけ充実
大人のぬりえ:豪華なボックス入り
大人のぬりえ:ミニブック
入浴剤:イケメン4人!
永遠のベルサイユのばら:豪華付録付き
マスコットスイング:8種類
オスカル
アンドレ
アントワネット
フェルゼン
オスカル大好き!
アンドレのライバル
王族ファミリー
悪女たち
実在の人物


