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2008年6月17日 (火)

世界史レッスン

王妃との不倫は命がけ 1724年

  ~アントワネット生誕31年前~

 『アラビアン・ナイト』こと『千一夜物語』は、<枠物語>(大きな枠となる物語の中に、複数の物語が入っている)ジャンルの典型だ。つまり美女シェヘラザートが千一夜にわたって王にお話を聞かせる、というのが大枠で、その中に「アリババと40人の盗賊」「船乗りシンドバット」「アラジンと魔法のランプ」etc,がぎっしり詰まっている次第。

 なぜシェヘラザートが文字通り夜伽(よとぎ)をするようになったかといえば、実はこの王、愛する王妃に裏切られ、間男(まおとこ)もろとも殺して以来、すっかり女性憎悪の塊になって、毎晩若い女性と一夜過ごしては朝になると殺す、という愚行を長年くりかえしており、それを止めさせるためだった。

 連夜シェヘラザートから面白いお話をいっぱい聞かせてもらった王は、千一夜目にしてやっとのことで女性不信を解き(幼児なみの困った王様ですね)、彼女と再婚、めでたしめでたし。

 それはともかく、王の妃(きさき)を相手にするのは、かくのごとく命を賭しての行為となることが多かった。フリードリヒ大王の祖母ゾフィア・ドロテアの恋人は、森で他殺体で発見されたし(「妻を32年も幽閉したジョージ1世」参照)、クリスチャンセン7世妃の愛人は八つ裂き刑になった(「死へ直結した不倫――デンマーク宮廷スキャンダル」参照)。

 ではロシアのツァーリ、息子を我が手にかけたとまで言われるあのピョートル大帝だとどうなるかといえば、これはもうただで済むはずがないのは誰でもわかる。

 大帝は最初の妻を修道院へ放り込み、ラトビアの農民出身の陽気なエカテリーナを2度目の妻にして20年、娘もふたりいた。彼は42歳の奥方をすっかり信じ込んでいたが、いつのまにやらコキュ(寝取られ亭主)にされていたのを、密告の手紙で知る。相手は若くてハンサムな侍従モンスだという。

 たちまちモンスは捕えられ、拷問。しかし裁判官は誰も(怖ろしくて?)肝心の点には触れられず、罪状はなんと「職務怠慢」(!)、なのに刑は斬首。1724年冬に執行された。

 ピョートルは妃を橇(そり)に乗せ、晒し台まで連れていって、槍に串刺しされたモンスの首と裸の胴体を見せた。彼女は顔色ひとつ変えなかったと言われている。するとその夕刻、彼女の部屋に、アルコール瓶に入ったモンスの首が届いた。

 ピョートル大帝のような男と長くいっしょに暮らしてきただけあり、エカテリーナはしたたかだった。頑として白状しなかった。しかも運命は彼女に味方する。

 誰もがエカテリーナの命は風前の灯と信じていたのに、このわずか2ヵ月後、なんとピョートルの方が先にあの世へ旅立ってしまう(「絶対君主たちの臨終シーン」参照)。彼女はまんまと次の帝位まで手に入れ――ロシア初の女帝誕生――、以後、男遊びをしまくったらしく、それを思うだにモンスが気の毒・・・ (中野京子)

《関連コラム》
~ピョートル大帝~
ばればれの変装…ロマノフ王朝5代目ピョートル大帝は、いわば織田信長をスケールアップさせたような、桁(けた)外れの独裁者にして改革者だった。
ピョートル大帝の黒人奴隷…ピョートル大帝と織田信長には、時代こそ違え共通したところが多かった。

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投稿者 中野京子 2008/06/17 8:26:02 世界史レッスン | | トラックバック (1)

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