神々のプロフィール―ばらに宿った神話―
妹を守りたくて アランとアステュギテース
“妹”というキーワードに、男性は憧れを感じるようだ。それは、「お兄ちゃん」と瞳をうるませて甘えてくる、無条件に守るべきかわいい少女を連想して、父性本能をくすぐられるからだと思われる。実際に妹を持つ男性からすると、「現実と想像はかなり違う!」と言いたいところだろうが。
「ベルばら」の“シスコン”といえば、「ベルばら」一の硬派アランだ。しかし、その妹ディアンヌを見ると、シスコンもいたしかたないかなと思える。
ディアンヌはかわいい。衛兵隊員のアイドルになるような愛らしい外見はもちろんのこと、頼りなげ、けなげ、純真、と守ってあげたい願望を刺激する要素をこれでもかというくらいに具えている。
ところがディアンヌは、かわいそうにフィアンセに捨てられてしまう。ひとりで自ら命を絶ってしまったディアンヌを救うことはアランにはできなかった。オスカルが訪れるまでアランは、魂が抜けてしまったように空ろな目をして、白骨化した哀れなディアンヌの横たわるベッドに寄り添うだけだった。
ギリシャ神話の時代、トロイア戦争の大英雄アキレウスが支配していたプティーアー地方に、美しい年頃の妹をもつアステュギテースという少年がいた。
プティーアー地方を治めていたのはメリテウスである。メリテウスは神々の王ゼウスと妖精との間に生まれた息子で、元々は気高い精神を持った男であった。ところが、長じて傲慢で残酷な暴君となり、ついに他国の人からはこうあだ名されるようになった――“タルタロス”と。それは、神々にそむいた大罪人が落とされる、怖ろしい冥界の最深部のことだ。それくらいメリテウスは忌まわしい暴君になっていた。
“タルタロス”ことメリテウスは、美しいと評判の娘を手当たり次第結婚前に凌辱するという、残酷な快楽に浸っていた。
アステュギテースの妹、アスパリスもメリテウスに目をつけられた悲運な娘のひとりだった。
アステュギテースは、勇敢にも妹が辱められる前にメリテウスを殺そうと決意した。少年であるアステュギテースは、剣を隠し持ち、妹の衣をまとって見張りの目を逃れ、メリテウスの館に侵入した。そして、武装もせず、ひとりでいたメリテウスをしとめることができた。
暴君から解放された人々は喜び、アステュギテースの頭上に花冠を捧げ、アポロン神の褒め歌を歌って列を成し、彼の勇気を称えてパレードした。
アステュギテースはその時はまだ知らなかった。妹アスパリスが何も知らないまますでに自ら命を絶ってしまっていたことを。
人々にとってアステュギテースは英雄だっただろうが、そんな栄誉はおそらく彼自身には虚しいだけだっただろう。アランと同じように、どんな犠牲を払っても守りたかった唯一の人を守ることができなかったのだから。(米倉敦子)
《参考文献》
・「メタモルフォーシス ギリシア変身物語集」 アントーニーヌス・リーベラーリス著 安村典子訳 講談社文芸文庫
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2008/06/27 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | Permalink | トラックバック (0)
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