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2008年7月 8日 (火)

世界史レッスン

ユゴーの娘アデル 1863年

  ~アントワネット没後70年~

 ヴィクトル・ユゴーについては、先週少しだけ触れた。ロマン派の代表的詩人・作家として名高く、政治家(上院議員にまでなった)としても活躍している。

 だがナポレオン3世の政策に反対したことから亡命せざるを得なくなり、50歳でイギリス海峡ジャージー島へ、やがてそこも追放されてガーンジー島へわたり、その地で『レ・ミゼラブル』を書き上げている(亡命生活は19年にも及んだ)。

 私生活も波瀾に富んでいて、本人のめまぐるしい女性関係の他、妻に横恋慕していた実兄の自殺、次いで妻と友人の不倫、長女は新婚早々ボート遊び中、夫とともに水死、次女アデルは――トリュフォーの映画『アデルの恋の物語』に描かれているとおり――エキセントリックな恋の虜(とりこ)となって自滅した。

 アデルが(本人にとってだけの)運命的恋をしたのは24歳。ジャージー島にいる時期だった。相手はプレイボーイのイギリス軍人で、彼にしてみれば文豪の娘といえども、ただの火遊びにすぎなかったらしい。

 数年後、イギリスは当時の植民地カナダに派兵が決まり、彼も中尉としてハリファックスへ駐屯になった。アデルは遠く離れた相手に恋心を募らせ、1863年、両親に黙ってひとり大西洋をわたる。すでに33歳になっていた。

 やがてユゴーは異国の娘から、ひんぱんに手紙を受け取るようになる。主に金の無心だったが、そのうち嬉しい便りが届く。中尉からプロポーズされたというのだ。さっそく結婚許諾の返事を書いた。ところが・・・

 現実は惨めだ。中尉は追ってきたアデルにうんざりし、あからさまに拒んだばかりか、別の女性と結婚していたのだ。にもかかわらずアデルは諦めきれず、彼の次の駐屯先バルバドス島まで追いすがり、ますます妄想を膨(ふく)らませてゆく。

 映画では、若く美しいイザベル・アジャーニがアデルに扮し、溶けるように自己崩壊する様を演じて切々と哀れを誘ったが、ほんもののアデルから何年もストーカー行為を受けた中尉夫妻にしてみれば、さぞやたまらなかったことだろう。

 アデルはなんと9年も異国にいて――その間に母も兄も死去した――ようやく故国へ連れ戻された。そして精神病院へ入れられ、85歳まで長生きし、1915年、第一次世界大戦のさなかに亡くなっている。 (中野京子)

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<関連コラム>
『メデュース号の筏』以前に

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投稿者 中野京子 2008/07/08 8:22:25 世界史レッスン | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第119回の今日は「ユゴーの娘アデル」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/07/post_6418.html#more  まさに狂恋と呼ぶにふさわしい恋の虜となったアデルについて書きました。トリュフォーの映画のラストでは、あれほど恋した相手とすれ違っても気がつかないまでになってしまい、泣けましたが・・・  ところでだいぶ出版が遅れ、申し訳ありません。世界史レッスンを100コ... 続きを読む

受信: 2008/07/08 9:36:57