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e-book Japan ベルサイユのばら

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2008年8月22日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

罪などないのに ルイ・シャルルとニオベの子どもたち

 ルイ16世と王妃マリー・アントワネットの間には、ふたりの息子がいた。長男のルイ・ジョゼフと、次男ルイ・シャルルである。

 『ベルサイユのばら』では、ルイ・ジョゼフはとても印象に残る存在だ。彼はわずか7才で命を落としたが、それでもオスカルに「あなたがすき」と愛の告白をし、自分の死の間際にも周囲をけなげにも気づかっている。まさに天使のような、神秘的ですらある美少年だ。

 ルイ・シャルルのほうは、子どもらしい無邪気なかわいい姿は印象に残るものの、兄ほどの神秘性を感じさせるようなエピソードはない。ふつうの幼い子ども。それがルイ・シャルルのイメージだ。いや、それだけに、幼い子どもがなんの責任もないのに歴史の残酷な渦に翻弄される姿は痛ましいとしかいいようがない。

 『ベルばら』では、フランス革命後の国王一家の苦難は、主にマリー・アントワネット目線で描かれているが、思えばたった4才だったルイ・シャルルの状況はもっと残酷だ。彼にしてみると理由も分からずに家から追い出され、始終命を脅かされて、流血沙汰を何度も目にし、蔑まれた。

 『ベルばら』最後の登場シーンでルイ・シャルルは歌っている。「貴族のやつらをしばり首」と。

 母親から引き離され、革命派の無学で粗野な靴屋シモンに預けられた少年は、自分の生まれを忘れさせられ、革命派の“教育”をされたのだ。いや、実は飲んだくれのシモンは“教育”などしていない。シモンは幼い少年に暴力をふくむ残酷な虐待を行っていたのだ。ルイ・シャルルは「狼の子」などと呼ばれ、人間性さえも否定され、いたぶられた。ただその血ゆえに。

 子どもは親にとって未来の象徴であり、なによりの宝だ。あれほどルイ・シャルルを愛していたマリー・アントワネットがこのことを知ったなら、どれほど苦しんだだろうか。

 ギリシャ神話ではこんな物語がある。

 テーバイの王妃ニオペは、神々の王ゼウスの孫であり、その権力と出自を誇っていたが、なによりの彼女の自慢は、男の子7人、女の子7人もの優れた子どもがいることだった。そのことに慢心したニオペは、あるとき、国の女たちが女神レトに祈るのを見て、「レトは、たったのふたりしか子どもがいない。こんなに大勢の優れた子をもつ私のほうが女神としてふさわしい」とレトを嘲(あざけ)った。

 そのことに憤ったレトは、自分のふたりの子、アポロンとアルテミスに母の屈辱を晴らせと命じた。双子の神々は、ニオペにとって一番手痛い復讐をした。ふたりは、ニオペがなによりも愛する子どもらを次々と獣でも狩るように射殺していった。一番幼い子にも神々は容赦しなかった。

 ニオペは悲しみのあまり、ついにその姿は岩に変わってしまったという。

 ルイ・シャルルニオペの子どもたちとは違い、病死。死因は結核とされていた。殺されなくてよかった?いや、そうではない。

 ルイ・シャルルの死の謎を追及したデボラ・キャドベリー著『ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット 革命、復讐、DNAの真実』にこうある。シモンから解放されたあと、幼いルイ・シャルルは自然光の一切入らない部屋に監禁され、誰からも世話をされず、最低限度の食事が与えられるだけで放置された。部屋は清掃もされないため、害虫が湧き、また孤独が少年をさいなんだ。ルイ・シャルルは病み衰え、廃人同然になってしまった。死ぬ直前には少しは環境は改善したようだが……。

 そして、ルイ・シャルルは10歳で亡くなるまで母親の死を知らず、彼女を慕い続け、部屋の壁にも「ママ、ぼくは―」という落書きを残した。

 やるせなさすぎて、言葉もでない。(米倉敦子

《参考文献》
『ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット 革命、復讐、DNAの真実』
デボラ・キャドベリー著 櫻井郁恵訳 近代文芸社

『ギリシアの神話』
カール・ケレーニイ著 植田兼義訳 中公文庫

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/08/22 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (0)

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