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2008年9月23日 (火)

世界史レッスン

夫の処刑も知らぬまま・・・ 1866年

  ~アントワネット没後73年~

 煮ても焼いても食えないナポレオン3世の口車に乗せられ、はるかメキシコの地で最期を迎えねばならなかったハプスブルク家のマクシミリアンについては、「梯子を外したナポレオン3世」で書いた。

 マクシミリアンは「メキシコ皇帝」という地位に幻惑されたわけだが、妻シャルロッテもまた夫に劣らず野心家だったと言われている。

 ベルギー初代国王レオポルト1世を父に、フランス前国王ルイ・フィリップの娘を母に持つシャルロッテは、夫が単なる大公のひとりにすぎないのに不満を抱き、また実家が自分より格下の義姉エリザベートが皇妃なのも面白くなかったというのだ。

 確かにそういう面もあったかもしれない。だがシャルロットの必死の行動を見ていると、エリザベートへの対抗意識云々よりむしろ、妻として夫の夢を叶えてやりたいという愛情の方を強く感じさせられる。政略結婚とはいえ、ふたりは仲の良い夫婦で知られていた。メキシコ渡航時、結婚7年目、子どもはいなかった。

 覚悟はしていたであろうが、2ヶ月もの船旅でようやく着いた異国は、聞きしにまさる不穏と戦乱の地だった。新米の皇帝夫妻はそれなりに奮戦したものの、2年目にナポレオン3世の裏切りにあうと、完全に窮地に陥ってしまう。シャルロッテはマクシミリアンの名代で、1866年、単身ヨーロッパへもどり、支援への嘆願運動をはじめる。

 当然ながらナポレオン3世は相手にしてくれない。頼みの綱の実家は、父が逝去していた。ハプスブルク家の方はもともとメキシコ皇帝就任に大反対だったから、行きにくい。バチカンで教皇に直訴した。そしてその直後――なんと彼女は、突然、精神の均衡を失った!

 メキシコでは片時も心休まらなかったのだろう。夫の命は風前の灯だ。なのにヨーロッパでは誰ひとりそれを気にかけてくれない。最後にすがったバチカンにまで見捨てられたことで、辛うじて保っていた正気が粉々に・・・

 シャルロッテは故郷ベルギーへ送られ、ブリュッセル郊外の小さな城に幽閉される。翌年、マクシミリアンは処刑されたが、彼女がそれを知ることはなかった。

 こうしてこの哀れな女性は、26歳から86歳という気の遠くなる長い年月を、狂気の闇の中で生きたのであった。 (中野京子)

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投稿者 中野京子 2008/09/23 8:46:06 世界史レッスン | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」128回目の今日は、「夫の処刑も知らぬまま・・・」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/09/post-771e.html#more マクシミリアンの妻シャルロッテの悲しいエピソードについて書きました。  シャルロッテは夫が処刑されたのを知らないで死んだが、マクシミリアンの方は妻が倒れたとの連絡を受けている。どっちが不幸だったのかな・・・?  話変わって−−  『オール讀物... 続きを読む

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