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2008年9月30日 (火)

世界史レッスン

マリー・アントワネットの手紙 1793年

  ~アントワネット37歳~

 「世界史レッスン」は<正篇>としてはいちおう今回をもって終了いたします(来月からは<映画篇>)。というわけで最終回は、やはりロココの薔薇アントワネットに登場してもらわなくては!

 ツヴァイク作『マリー・アントワネット』(角川文庫。中野京子訳)をもとに、彼女が書いた手紙のいくつかを紹介しよう。

 勉強嫌いのマリーは、当時の国際語であるフランス語のレッスンを、さぼることばかり考えていた。おかげで結婚した後も、最初のうちはたどたどしい文章を書くのが精一杯。

 「わたしは9時半か10時に起き、服を着て、朝の祈りを唱えます。それから朝食をとり、叔母さまたちのところへ行き、そこでたいてい国王にお目にかかります。それが10時半までかかります。それから11時に髪を結いに行きます。廷臣たちが呼ばれ、彼らの前で紅をつけ、手を洗います。それから・・・」

 ―― 母マリア・テレジアに宛てた日課の説明だが、「~します。それから~します」と、延々、まるで小学生の作文のように続く。

 7年後、もうフランス語には不自由しない。夫婦の夜のいとなみについて、あけすけに母へ報告する。

 「生涯最高の幸せにひたっております。結婚が完全なものになって、もう1週間たちます。何度も試してみて、昨夜は最初よりもっと完璧になりました。妊娠はまだと思いますが、少なくともいずれ近いうちにという希望はあります」

 やがて革命の足音がひたひた迫りはじめ、誰も彼も国を捨てて逃げ出したころ。いち早く亡命した親友ポリニャック夫人へは――

 「あなたとお別れしてどんなに残念か、とても言い表せないくらいです。あなたも同じように思ってくださることだけ願っています(中略)ですがわたしの力や勇気が、こうした不愉快なことで揺らいだとはお考えにならないでください。わたしは諦めていません」

 ヴァレンヌ逃亡に失敗し、連れ戻された王宮内で、わずかの隙をぬって小さな紙片へ走り書き。

 「どうかご心配なさらないで。わたしたちは生きています」 ―― もちろん愛するフェルゼンへ宛てたものだ。

 1793年10月15日。明日はギロチン台へ上がる前夜。オーストリア・ハプスブルク家のマリア・アントニアとして生まれ、ルイ16世妃マリー・アントワネットとなり、今や未亡人カペー(ブルボンの先祖カペー家に拠る)と呼ばれて貶(おとし)められる、37歳の白髪の彼女は、乏しいロウソクの炎ゆらめく下、義妹に宛てて遺書ともいうべき最後の手紙を書く。

 「妹よ、たった今、判決を受けたところです。不名誉な死ではありません。そのようなものは犯罪者が受けることで、わたしには、あなたの兄上と再会するようにとの判決でした。あの方と同じく罪なき身のわたしは(中略)良心の咎めを受けない人間がそうであるように、全く平静です。深く心残りなのは、子どもたちを置いてゆくことです」

 冷静に始まったこの手紙だが、書き進むにつれ、次第に心の動揺をあらわにしてゆく。

 「さようなら、善良でやさしい妹! この手紙があなたに届きますよう! わたしを忘れないでください! あなたと、そして可哀そうな子どもたちを、心をこめて抱きしめます! 神よ、子どもたちを永遠に見捨てなければならないのは、なんと胸張り裂けることでしょう! さようなら、さようなら!」 (中野京子)

pen<編集部からのお知らせ>
「世界史レッスン」は、今回が最終回となります。10月からは「世界史レッスン<映画篇>」がスタートし、第2・第4火曜日に更新します。そちらもどうぞお楽しみに!!

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投稿者 中野京子 2008/09/30 8:51:34 世界史レッスン | | トラックバック (2)

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 朝日新聞公式ブロク「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第129回の今日は「マリー・アントワネットの手紙」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/09/post-8606.html#more  ちょうど昨日連絡があり、ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫)が4刷になった由。古典中の古典ですから、これからもずっと読み継がれてゆくことでしょう。訳者として光栄に思っています♪  さてアントワネットの悲痛な最後の手紙。これはけ... 続きを読む

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