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2008年9月 2日 (火)

世界史レッスン

コレラの時代 1858年

  ~アントワネット没後65年~

 いま公開中の『コレラの時代の愛』(マイク・ニューウェル監督、ガルシア・マルケス原作)は、恋した人を50年以上も待ち続けた男の、奇妙で滑稽で、にもかかわらず感動的な物語だ。

 舞台はタイトルどおり、コレラの荒れ狂う時代――19世紀後半のコロンビア。街路でおおぜいの人が倒れ、遺体が物のように荷馬車に積み込まれるシーンや、コレラ患者発生の印の旗をたてて航行する川船の様子などが、リアルに描かれている。

 この疫病がペスト並みに恐れられたのは、致死率の高さはもちろんのこと、ついさっきまで元気で健康だった人間が、突如、嘔吐・下痢・高熱を呈し、毛細血管の破裂で皮膚は青黒く変色、極度の脱水症状によってミイラさながらに干からびるという、その激烈な症状からもきている。

 もともとはインド・ベンガル地方の一風土病にすぎなかったのだが、19世紀に入り世界各国の通交が密になるとともに、アジアからヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカまで伝播し、地球規模で何度も大流行をくり返すようになった。

 日本が初めて襲われたのは、1822年。幸いこの時はコレラ菌も箱根を越えられず、最悪の事態は防げた。ところが第二次流行となった1858年(安政5年)、米艦ミシシッピ号によって運ばれてきたとされるコレラは、江戸だけで死者10万とも26万ともいわれる猛威をふるった。いわゆる「安政コロリ」がこれである。

 『安政午秋・頃痢(ころり)流行記』には、「焼場の柩、所せまきまで積みならべ山となせり」とあるから、前述の映画と似たような惨状が江戸でもくり広げられていたのがわかる。

 また「卒病即死、ゆえに土俗病名を狐狼狸(ころり)と揮毫(あだな)して、あらぬ説を流言(いいふら)し、妖怪変化の所為なりとし、且つ、水毒といひ魚毒とす」ともある。原因もわからず治療法もないときては、流言蜚語(りゅうげんひご)が飛びかうのもとうぜんであろう。

 コッホがコレラ菌を発見するのは、この25年も後だった。 (中野京子)

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投稿者 中野京子 2008/09/02 8:38:40 世界史レッスン | | トラックバック (2)

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