世界史レッスン<映画篇>
頬紅は、めくるめく恋の陶酔用 1773年
~アントワネット18歳~
純朴な田舎の青年がひょんなことから国を出て、各地をめぐり軍隊に入り、さまざまな体験を重ねるうち次第に堕落、だが心の荒(すさ)みと反比例して富と身分は急上昇・・・
華麗なる歴史絵巻を堪能(たんのう)できるのが、サッカレー原作『バリー・リンドン』(スタンリー・キューブリック監督、1975年)。
軸になるのは七年戦争で、これは1756年から63年まで続いたヨーロッパ各国の覇権(はけん)争いだ。この結果、フランスは弱体化、イギリスはアメリカのフランス領ばかりかインドまで奪取、フリードリヒ大王のプロイセンも大国へのしあがった。
さて映画だが、主人公バリーはアイルランドの農民。恋敵と決闘してイングランドへ逃げたものの、追いはぎにあって一文無しとなり、やむなく英軍に入隊して七年戦争に加わる。
戦場は悲惨だ。すっかり嫌気がさして脱走したバリーは、プロイセン軍につかまり、今度はプロイセン兵として戦うはめになる。幸い戦功をあげたため上官に気に入られ、戦後はスパイとして某男爵のもとへ送り込まれた。
ところがこの男爵が偽貴族で、すっかりバリーとうまがあい、ふたりはいかさま賭博師として各地で荒稼ぎしてまわるようになる。こうしてバリーは一人前のワルとなった。
1773年、ベルギーの豪華ホテルで彼は、莫大な財産を持つレディ・リンドンと出会う。彼女を陥落すれば、一気に貴族の仲間入りができるだろう・・・
あとは見てのお楽しみ、ということで、この作品の見どころは――なにしろ監督があの凝り性のキューブリックなので――全てが本物志向という点。城も室内装飾も衣装もだ。
衣装に関しては、18世紀の古着を世界中からかき集め、俳優に着せてみたところ、どれも小さすぎて縫製し直しが必要だったという。いかに現代人が大型化したか、というよりいかに当時の人々が小柄だったかがわかるエピソードだ。
また、全篇ロウソクの明かりと自然光のみでの撮影なので、意外な発見がある。ロココのどぎつい化粧(ぬりたくった白粉、けばけばしい頬紅、わざとらしい付けボクロ)が、ロウソクの揺らめきのもとでは、驚くばかりの妖しい美しさを発揮するのがわかるのだ。
「紅は自然であってはいけない。紅はめくるめく恋の陶酔用なのだから」というカサノヴァの言葉に深く納得させられた。 (中野京子)
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投稿者 中野京子 2008/10/14 8:36:23 世界史レッスン<映画篇> | Permalink | トラックバック (3)
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キューブリックの歴史絵巻「バリー・リンドン」を取り上げました。
この作品はそんなにヒットしなかったということですが、今見てもなかなか面白いです。本文にも書きましたが、衣装が本物なのですごく勉強になる。コッポラの「マリー・アントワネ... 続きを読む
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18世紀フランスは、とにかく他人の視線を意識する時代だった、ということは以前に述べました。(幸福のからくり参照)
前回いくつか例をあげたりもしましたが、今日は主にその部分をもっと細かく抽出してみたいと思います。
18世紀フランスの「見せる」「見られる」...... 続きを読む
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