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2008年10月28日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

豚肉を食べなかったばかりに・・・ 1793年

  ~アントワネット37歳~

 富裕な商人の娘イネスは、レストランで出された豚肉を食べなかった。そのことが「隠れユダヤ教徒」、即ち「異端者」と疑われ、うむを言わさず拘束され拷問され・・・

 『宮廷画家ゴヤは見た』(ミロス・フォアマン監督、2008年公開)は、悪名高いスペインの異端審問で、肉体も魂も虫けらのように踏みつぶされる民衆の悲劇をリアルに描きだし、見る者の胸を抉(えぐ)る。

 メインのストーリーはフィクションだが、「我が子を喰らうサトゥルヌス」や「裸のマハ」などを描いた実在の画家ゴヤを登場させ、彼の透徹した眼で見た動乱のスペイン――腐敗しきった宮廷、恐怖で支配しようとする教会、無知ゆえに翻弄(ほんろう)される民衆――を、痛烈に暴き出す構造になっている。

 時あたかもフランス革命真っ只中。スペイン王家にとっては、お家の一大事だ。なぜなら(「血族結婚くり返しの果てに」で書いたように)、ハプスブルク家のカルロス2世亡き後はブルボン家が跡を継ぎ(ルイ14世の孫)、カルロス4世へ至っていたからだ。

 4世はフランスの親戚を助けるため、ひいてはヨーロッパの絶対王政を維持するため、革命軍に宣戦布告したり買収工作をしたりして、流れを変えようとしたが力及ばず、1793年、ルイ16世はギロチン台へ引きたてられた。

 この映画では、ルイ処刑の知らせが数日遅れでスペインへ届き(ずいぶん情報伝達が遅いのがわかる)、カルロス4世が憮然(ぶぜん)とするシーンが挿入されていた。

 後にはナポレオン侵攻あり、王家の亡命ありと、スペインもまた激動し続けるのだが、教会の地下牢に放り込まれたままのイネスにはあずかり知らぬこと。彼女はなぜ自分が捕まえられたかも、またなぜ解放されるかもよくわからない。無常にも15年もの年月が過ぎ去っていたのだから。

 イネス役のナタリー・ポートマンには度肝を抜かれる。美人女優がここまでやるのかと、その役者魂に敬意を覚えずにおれない。彼女の入魂の演技によって、このおぞけをふるう非道が遠い歴史の物語などではなく、ナチスの時代も同じだったし、今も、そしてこれからも起こり得ることなのだと、観客を深く震撼せしめるのだった。 (中野京子)

<関連記事>
《アサヒ・コム 映画イチオシ本舗》宮廷画家ゴヤは見た

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投稿者 中野京子 2008/10/28 8:25:46 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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