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2008年11月11日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

ヴァンパイアもモーツァルトを歌う 1786年

  ~アントワネット31歳~

 サンフランシスコの高層ビルの一室。ルイという黒髪の美青年が、ジャーナリストのインタビューに答えて曰く、自分はヴァンパイアで、もう200年も生き続けている・・・

 吸血鬼ものを現代的感覚で蘇(よみが)えらせた『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(二ール・ジョーダン監督、1994年公開)の、さりげない導入部だ。

 やがて舞台は、18世紀後半のニューオーリンズへ遡(さかのぼ)る。フランス移民の農場主だったルイが妻子を失い自暴自棄になっているところへ、レスタトと名のるヴァンパイアがあらわれ、心ならずも仲間に引きこまれてしまう。

 ルイが人間の生き血を吸うことに慣れず、いつまでもくよくよ悩んでいるので、レスタトはペットを与えることにする。それが、ペストで死にかけていた少女クローディアだ。この子も吸血鬼へ変えた。

 レスタトが彼女とダンスしながら鼻歌をうたうシーンがあった。モーツァルトの『フィガロの結婚』のアリア<もう飛ぶまいぞ、この蝶々>。軽快で親しみやすいリズム、一度聞いたら忘れられないメロディ、あらゆるオペラ・アリア中、もっともよく知られた曲だ。

 『フィガロの結婚』がウィーンで初演されたのは1786年、つまりレスタトは現地でリアルタイムで--おそらくモーツァルト自身の指揮で--舞台を見ていたのだろう(当時アメリカではまだ上演されていない)。オペラというより流行曲風に歌っていることに、リアリティが感じられた。

 さて、クローディアだが、マリー・アントワネットを演じたあのキルスティン・ダンストが扮して、すばらしい演技をみせる(この時まだ12歳!)。

 クローディアはヴァンパイアとして不死となったはいいが、50年たっても100年たっても肉体が少女のまま成熟できない。おとなの女性としての歓びを得られない鬱屈(うっくつ)が次第に心を歪ませ、残酷さに拍車をかける。見かけは可愛らしい子どもなのに、瞳は激しい愛欲と老獪(ろうかい)でぎらつきだす。

 そんなアンバランスの極地に、そぞろ哀れを誘われた。 (中野京子)

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投稿者 中野京子 2008/11/11 8:59:19 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (3)

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