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2008年12月26日 (金)

神々のプロフィール―ばらに宿った神話―

国を揺るがした女王の恋

 テレビで毎日のように取りざたされる有名人の結婚のニュースを見ることもあるし、友だちの“恋バナ”を興味津々で聞くこともある。しかし、その結婚や恋が他人のものである以上は自分の生活にはなんら関係がない。結婚しようが恋をしようがしょせんは他人事である。

 ところが、絶対王政下の王族の結婚や恋となると、国民にとっては他人事ではない。とくに結婚は政治であり、どこの国と結ぶのか一国の外交方針そのものだ。

 オーストリア皇女マリア・アントニアとフランス王太子ルイとの結婚は、世界の歴史からみても大きな意義があった。マリア・アントニア、後のマリー・アントワネットにはたくさんの姉妹がいたが、もし彼女ではなく別の皇女がフランス王妃になっていたなら、あるいは他国の王女がルイ16世の妃になっていたなら、フランス革命はなかったのだろうか。フランス革命がなければもっと長い間、封建制度が保たれたのだろうか。
 そう考えると、この結婚が及ぼした影響の大きさは計り知れない。

 ギリシャ神話を軸にするラテン文学の最高傑作『アエネーイス』には、ディドーという名の女王が登場する。彼女の結婚そして恋は国を作りあげ、揺るがし、多くの民の運命を左右した。ディドーの運命こそ、国の運命そのものだった。
 
 ディドーはフェニキア人の都市国家ティロスの王女として生まれた。父王の死後兄ピュグマリオンがティロスの王となり、ディドーは叔父であるシュカイオスと結婚した。ところが、ピュグマリオンシュカイオスの財産を手に入れるため、彼を殺害する。
 夫を失ったディドーは、兄の魔の手から逃れるべく数人の貴族とともに財宝を船に乗せて故郷を去り、北アフリカに上陸した。この地の王イアルバスは、一頭の牛の皮で覆うことができるだけの土地ならばディドーたちに分け与えてもいいという。ディドーは牛の皮を細かく刻み、広大な土地をそれで取り囲み、土地を得た。土地の中心にはビュルサ(牛皮)と呼ばれる城が建造され、国は大いに繁栄した。この国こそ古代国家カルタゴである。
 若き女王ディドーの才気に惚れこんだイアルバスは結婚を申し込んできたが、彼女は拒絶した。

 あるとき、ギリシャ人によって滅亡させられたトロイアの英雄アイネイアスがカルタゴに漂着した。ディドーアイネイアス一行を手厚く歓待した。
 アイネイアスは美の女神アフロディテの息子で大変美しい若者だった。国を追われた不幸を共有するからだろうか。ディドーは彼に心惹かれ、恋をした。ある日、狩に行ったふたりは雨宿りをした洞窟で結ばれる。ディドーはふつうの娘と同じように恋する若者との結婚を夢見た。
 
 しかし、このことを知ったイアルバスは嫉妬し、神々の王ゼウスに訴える。アイネイアスは南イタリアで後の大帝国ローマを建国するように定められた者だった。ゼウスは、アイネイアスに南イタリアにむかえと命ずる。
 ゼウスの言葉により自分の使命に目覚めたアイネイアスはカルタゴを去った。愛する男に捨てられ絶望したディドーは、恋の思い出の品を積み上げその悲しい瓦礫の上に立ち、自分もろとも火を放った。燃え上がる炎のなかで死にゆく女王はカルタゴの民にむかって叫んだ。それは建国の女王の恐るべき遺言だった。
 「我がカルタゴの民よ。子々孫々までアイネイアスの末裔を呪い、永久にその敵となりて、かの者を苦しめよ」
 この壮絶な女王の悲恋こそが、カルタゴとローマの1000年に及ぶ争いの歴史の発端となったといわれている。カルタゴは最終的にローマとの戦闘の果てに滅ぼされる。
 
 ディドーが失恋に耐えていればカルタゴの運命は変わっていたかもしれない。しかし、人並み以上に苦労を重ねて立派に勤めを果たしてきた女王が最後に見せた人間臭さを責めるのも気の毒なようにも思える。
 カルタゴ国民にとっては途方もない災難ではあるのだが。(米倉敦子

《参考文献》
『ギリシア・ローマ神話辞典』 高津春繁著 岩波文庫
・『週刊古代文明ビジュアルファイル83』 株式会社デアゴスティーニ・ジャパン

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/12/26 11:00:00 神々のプロフィール―ばらに宿った神話― | | トラックバック (1)

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