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2009年1月13日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

歌手から宮廷人へ 1737年

  ~アントワネット生誕18年前~

 あけましておめでとうございます。本年も「世界史レッスン<映画篇>」をどうぞよろしく♪ 今回<映画篇>としては第7回ですが、その前の「世界史レッスン」から数えると、早や136回目。お正月らしく(幕の内は過ぎましたが)、華やかな作品を選んでみました。

 実在したスーパースター、ファリネッリの生涯を描いた『カストラート』(ジェラール・コルビオ監督、1994年公開)。

 

 「神はただひとり、ファリネッリもただひとり」と絶大な賞賛を浴びた彼の人気ぶりについては、以前「カストラートのおっかけ」でも書いた。あのヨーゼフ2世も夢中だったのだ。 

 カストラート(変声期前に去勢手術した歌手)は、純粋に芸術のためだけに生み出されたもので、しかも本人は年端(としは)もゆかぬ少年ということで、人道主義の高まりとともに廃(すた)れてしまったのはやむをえないだろう。

 カストラートたちのほとんどが下層階級出身だったのに対し、ファリネッリは貧しいとはいえ貴族の出だった。優れた容姿、美声、3オクターブ半もの広音域、華麗な装飾テクニック、変幻自在な声音、しかも息継ぎなしで1音を1分以上伸ばせたという。

 もはや絶対に聞くことはできないそんなファリネッリの幻の声を、この映画はなんとコンピューターで作り上げてみせた。カウンターテナー(ファルセットで歌う男声最高音歌手)とソプラノを合成したのである。人工的な不自然さもほとんど感じさせないその素晴らしさには、ただただ圧倒される。

 映画はまた、カストラートの存在なしにはオペラが成り立たなかった、装飾過剰でギンギラな舞台を現代に蘇えらせる。オペラがいかに贅沢な娯楽であったか、スター歌手への熱狂がどれほどのものであったかを、時空を超えて体験させてくれる。

 あいにく制作者の関心が「去勢」という一点にばかり向けられ、不要な性描写が多すぎるのが欠点といえよう。あれほどの名声を得たファリネッリが、現代人と同じ感覚で悩み続けたとはとうてい思えないからだ。

 それはさておき、この不世出の歌手の引退は早かった。1737年、32歳で舞台を去り、スペインのフェリペ5世お抱えの宮廷人となる。招聘(しょうへい)されるにあたっては、彼が貴族出身だったことも考慮されたに違いない。

 ブルボン家からスペインへ乗り込んできたフェリペ5世は、鬱病だったといわれる。毎晩ファリネッリの妙なる歌声に慰められねば眠れなかったらしい。ラジオもCDもない時代には、歌を聴きたければこうして本人を連れてくるしかなかったわけだが、連れてくるだけでなく独占できたのは、唸るほど金銀財宝を持つ王侯貴族のみ、という次第。 (中野京子)

movieカストラート

監督:ジェラール・コルビオ
出演:ステファノ・ディオジニ、エンリコ・ロ・ヴェルソ他
公開:1994年

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投稿者 中野京子 2009/01/13 8:29:22 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (1)

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 朝日新聞ブログ「世界史レッスン<映画篇>」の新年第1回目の今日は、「歌手から宮廷人へ」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2009/01/post-5a5b.html#more  カストラートの代名詞的存在、ファリネッリについて書きました。  2,3日前から風邪気味で今も薬を飲んでぼわ〜としているので、数年前、某雑誌に書いた原稿の再録でお茶を濁させてくださいまし。以下ーー < アニメはこれまでほとんど見なかった。 「となりのトトロ」も、実は少しも見... 続きを読む

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