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2009年1月27日 (火)

世界史レッスン<映画篇>

男を破滅させる運命の女 1843年

~アントワネット没後52年~

 ファム・ファタール(運命の女)の代表といえば、フランス人作家メリメが創造したカルメンであろう。ビゼーのオペラ化によってさらに有名になり、映画も現在DVDで手に入るだけで10種近くあり、根強い人気を誇っている。

 最新作で、なおかつ原作に忠実なのが、『carmen.カルメン』(ヴィンセンテ・アランダ監督、2003年公開)。

 さて、原作者のプロスペール・メリメだが、驚くほどのマルチ・タレントの主だった。本業は役人で、遺跡監督官。そのうえ考古学者で言語学者、ロシア文学の翻訳家(プーシキンを初めて仏訳した)、海外通信員、後には上院議員にまでなった。ついでながらハンサムで女性関係も派手だった。小説は自分では「素人」と称していた(ここまでくると嫌味ですね)。

 『カルメン』を発表したのは1843年。きっかけは二度にわたるアンダルシア地方の遺跡調査である。この際たまたま、現地に住む同国人の知りあいから、「脱走して盗賊となった兵士が、嫉妬の果てに恋人を殺し、処刑された」という新聞の三面記事を教えられる。これが不朽の名作へと結実したのだから面白い。

 当時のフランス男性は、スペインを「ピレネー山脈を越えたらそこはアフリカ」と野蛮視する一方、黒目・黒髪のエキゾチックで情熱的なスペイン女性――多分に勝手な妄想が入っているのだが――への憧れが強く、カルメンもその路線上で造型されたといわれる。

 この映画は、原作どおり入れ子構造にしてある。つまりメリメ本人を彷彿(ほうふつ)とさせる学者が、恋人殺しの脱走兵ホセから話を聞くという大きな外枠があり、その中身が、ホセとカルメンの激しい恋の顛末(てんまつ)というわけだ(オペラの場合、この外枠がすっぽり抜けている)。

 男を翻弄(ほんろう)し、破滅させ、同時に自分もまた命を捨てることになるカルメン、その強烈な女性像に対しては誰もがそれぞれ自分のイメージを持っているだろうから、演じるほうは大変に違いない。本カルメンは美人でスタイル抜群。そしてなぜかいつでもどこでも平気で服を脱ぎ、丸裸でいることが多いのだった。

 ここまで羞恥心のないオールヌードだと、かえってエロスから離れてゆくばかりの気がするのだけれど・・・ (中野京子)

moviecarmen. カルメン

監督:ヴィンセンテ・アランダ
出演:パス・ヴェガ、レオナルド・スバラグリア他
公開:2003年

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投稿者 中野京子 2009/01/27 8:33:30 世界史レッスン<映画篇> | | トラックバック (3)

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